出会いは偶然、この未来は必然 3【松野千冬】 (ページ20)

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ワインが運ばれてきた

ソファにどかっと座る柴社長がグラスにワインを注ぐ

監視の2人は当初躊躇いながらも、そのグラスに口をつけた

私も社長も、口から出る言葉は何気ない話をする

でも、社長の膝に置いた私の指先と、私の腰に回された社長の指先は、口から出る言葉とは全く違う内容を話している

はたからみればキャバクラか何かと勘違いされそうだけど

今はそんなことに構っている余裕はない

大寿
『何が起きた？』

A
『梵天に誘拐され、協力させられています
　彼らは私の監視役』

そう伝えると、社長表情がこわばった

大寿
『大層な奴らに目をつけられたな』

A
『普段はとある高層マンションに閉じ込められています
　私1人ではここから逃げられない』

大寿
『相手が梵天となれば、一筋縄ではいかない
　俺でも、お前をそこから助けるには時間と準備がいる』

A
『いえ、危険が伴いますから社長にご迷惑はかけられません
　ですが…
　あの日、仲介役をした報酬を、いただきます…』

大寿
『…報酬、だと…？』

A
『千冬に…
　松野千冬に、伝えてください
　私が梵天にいることを…』

大寿
『伝えるだけで、それがあの時の報酬だと？
　松野はカタギだ
　奴一人では梵天とはやり合えねぇだろ』

A
『…そうかもしれません…
　でも彼ならきっと、助けてくれると信じています…』

大寿
『…そうか…
　お前がそれでいいなら、承るぞ』

A
『ありがとうございます
　今日の取引相手が、社長でよかったです』

大寿
『…不幸中の幸い、か
　今は辛いだろうが、必ずチャンスはくる
　諦めず、待っていろ』

そう社長は指先で伝えてくれた

同時に、腰に回された腕に少し力が入るように感じた

これで、社長は千冬に私の現状を伝えてくれる

千冬を巻き込みたくなかったけど…

一緒に生きていくって決めたから

辛いことがあっても、一緒に乗り越えていけると信じてるから

巻き込んでごめんなさい

そう思うのに…

助けに来たぞって言って欲しいのは、やっぱり千冬しかいない

A
「社長、今話した事業提携の件、悪い話ではないと思います
　私たちに任せていただければ、さらに事業を拡大できます
　ぜひ、前向きにお考えください」
　
大寿
「今日は一度持ち帰り、後日また話そう
　それまでに事業拡大の計画書は用意しておけ
　条件と計画内容次第と言ったところだ」

A
「ありがとうございます
　また近日中にお会いしましょう」