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後日、柴社長のアポ取りができた
当初、社長が経営するお店で取引を、と言われたけれど、梵天側はそれを拒否
今回は梵天側が指定した飲食店で会うことになった
おそらく、そのお店は梵天がバックについていると思われる
先に店の個室に入り、彼が来るのを待った
退社するまでは毎日着ていたスーツに、久しぶりに袖を通す
犯罪集団の片棒とは言え、やっぱりこの格好をすると気持ちもパリっとする
今日、私の監視役は鶴蝶の部下が2人
あくまで、取引の勉強のために同席、という設定らしい
もし今日ミスをすれば、もう梵天から逃げる手段を失ってしまう
座り心地のいい、広いソファ席が向かい合わせになっている
はたから見れば、本物の高級店だ…
そして、予定時刻より少し早く、柴社長が現れた
オールバックのヘアスタイルに、品のいいスーツ
磨き上げられた革靴
立ち居振る舞いも、全てが洗練されているように見える
A
「社長、お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます」
すっ、と私から手を差し出し、握手を求める
この一瞬で、全てが決まる…
大寿
「他でもないお前の頼みだ
時間くらいいくららでも割いてやる」
そう言って、社長も手を差し出し、握手を交わしてくれた
私は、これまでの商談の中で1番の賭けに勝ったらしい
握手と同時に、私は指先をトントンっと不規則に動かした
あのパーティーで使った、社長と私しか知らない信号…
A
『危険』
手短にそう伝えると、社長の眉がピクっと一瞬だけ動いた
社長は頭の回転が早い
おそらく、今の一言で、何かを察してくれたはず…
大寿
「前の会社を退社して、こんなに早く他の会社にいるとはな…
ヘッドハンティングでもされたか?」
A
「お察しの通りです
彼らの教育係も任されまして…
今日は社長との商談に同席させていただきたいのですが…」
監視役をそう紹介する
大寿
「普段なら大事な取引内容を聞かせるわけにはいかないが…
まぁ、お前の頼みなら仕方ない」
A
「ありがとうございます
せっかくですから、お食事しながらいろいろお話をさせていただきたく思います」
大寿
「いいだろう
そこのお前たちも、席に座れ」
そう言いながら、社長はさりげなく私の腰に手を回し、私をソファ席の隣に座らせた
監視役の2人は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに向かい側のソファ席に座った
ごく、さりげない動作
社長は私の異常を察してくれているようだった
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年12月5日 18時