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大寿
「場地A、お前に頼みがある
俺は神奈月とコンタクトをとりたい
近々行われる財界人の集まりに奴が来るのがわかった
俺とその集まりに出席し、神奈月との仲介役を任せたい」
A
「集まり、といいますと…?」
大寿
「表向きはある会社社長の誕生日パーティーだ
だが、実際は経済界の様々な取引がされてる面もある
お前には俺の同伴者として、出席してもらいたい」
A
「…あいにく、愛人家業はしておりませんが…」
私がそう言うと、柴社長は再び大笑いを始めた
大寿
「せっかく来たんだ、そう焦って帰ろうとするな
今回が、お前の最後の仕事だと聞いてる
結婚することも聞いてる」
とにかく座れ
柴社長に促され、私は再び席に着いた
柴社長とは数年前から仕事で何度もお会いしている
私の顧客の中でも一番長い付き合いの取引先
大寿
「相手は、松野千冬だろ」
A
「…なぜ、社長が彼のことを…?」
大寿
「妹から聞いた
先日、お前のドレスの着付けを手伝った、と」
A
「…もしかして、柚葉さん、ですか?」
知らなかった
柚葉さんが社長の妹だったなんて…
いつのまにか、目の前には出来立てのコース料理が運ばれていた
食べながらゆっくり話そう、と社長は言った
社長がかつて東卍とぶつかっていたことを聞いた
それから、私の結婚の話もした
仕事で来たはずなのになぁ、と思いながら雑談が続く
食事が終わる頃、社長は再び仕事の話を始めた
私に一枚の紙を見せた
A
「モールス信号、ですか…?」
大寿
「…覚えたか?」
A
「…はい…」
私が答えると、彼はすぐにテーブルをトントンッと不規則に叩き始める
言葉は一切発しない
大寿
『モールス信号を少し変えた、今回の取引のためだけに使う信号
当日、会場で何かあればこれを使う
口外するな』
A
『まだ引き受けると決めておりません』
大寿
『俺にも夢がある
だからプロジェクトをどうしても成功させたい
頼む』
そうわたしに伝えると、彼は頭を下げた
A
「社長っ!
顔を上げてください!」
大寿
「お前の人脈と瞬時に人を見抜く力
そして、並外れた記憶力
力を貸してくれ」
私の知る柴大寿は警戒心が強く、人に屈しない
頭を下げるなんてしない
熱意に負けた
私の最後の仕事は、物や企画の提案や交渉ではなく
人と人を繋げる仕事となった
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神奈月(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。お話は佳境ですが、みなさんに楽しんでもらえるようにがんばります。 (2022年11月27日 7時) (レス) id: d80d51a44f (このIDを非表示/違反報告)
あい - いつも更新を楽しみにしています。千冬と一虎、これからヒロインとどんな結末が待ってるのかとても楽しみです (2022年11月26日 16時) (レス) @page39 id: c280eab537 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年11月1日 13時