昔話を… ページ5
圭介くんの命日
涼子ちゃんとは時間の都合が合わず、今年は1人でお墓参りに行くことになった
あの抗争で亡くなって、もう12年
あなたのいない日々に、私も涼子ちゃんも寂しさはあります
それでも、あなたの思い出話ができるくらいの年月が経ってしまいました
かがんで墓前に手を合わせると、あなたとの思い出が蘇る
子供の頃の、キラキラした思い出
最後の記憶は、棺に静かに眠るあなたの顔
A
「圭にぃ…
…久しぶりに呼んでみたけど、やっぱダメかな?
中学入った頃に、圭にぃって呼んだら、もうその呼び方やめろって言われちゃったからね…」
久しぶりに、圭介くんの葬儀のことを思い出した
派手な髪色のお友達が多かった
ピアスや刺青をした人もいた
怖そうな人ばっかりだったけど、みんな、目に涙を溜めていたのを覚えている
祭壇の前で泣き崩れた人もいた
祭壇の前で、人目もはばからずに泣いていた、金髪の…
左耳にはシルバーのピアスをしていた…
A
「…あれ…
そういえばあの泣いてた人、どこかで…」
キリっとした瞳に、金髪と左耳のピアスははっきり覚えている
その人の顔を思い出そうと、記憶を辿ろうとしていた時だった
靴音に、はっとして顔を上げた
A
「松野さん…?」
千冬
「…A、来てたのか…」
A
「来てたのか、って…
…松野さん、圭介くんのお友達…ですか…?」
私がそう聞くと、彼は少し困った顔をした
彼は私の隣に立つと、花を活け、お線香をあげて手を合わせた
手慣れてる
千冬
「場地さんは…、俺の憧れだった
この人の背中を追って、いろんなもん見て、教えてもらった
場地さん、ホントにカッケー人だった…
今でも、俺の憧れの人だ…」
その横顔を見て、思い出した
A
「…あなただ…」
千冬
「…ぇ…?」
A
「私、あなたと、圭介くんの葬儀の時に、会ったことある…」
千冬
「…場地さんの、葬儀で…?」
A
「あの日、人目もはばからずに、泣いてる男の子がいた…」
圭介くんのこと、よほど好きだったんだろうな、って…
葬儀の後、みんなが帰る中、彼は祭壇の前で呆然としててね
私、声をかけたの
『大丈夫?』って…
そしたら
『大丈夫なわけねぇだろ』って言われた
『辛いのはあなただけじゃない』って言ったら
『お前に何がわかるんだよ』って返されたの
A
「そう言われて気付いたの
この人が圭介くんがいつも話してた『千冬』だ、って」
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神奈月(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。お話は佳境ですが、みなさんに楽しんでもらえるようにがんばります。 (2022年11月27日 7時) (レス) id: d80d51a44f (このIDを非表示/違反報告)
あい - いつも更新を楽しみにしています。千冬と一虎、これからヒロインとどんな結末が待ってるのかとても楽しみです (2022年11月26日 16時) (レス) @page39 id: c280eab537 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年11月1日 13時