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甘い、痺れるような感覚
これまで何度、この部屋であなたに愛されたんだろう
あなたの指が私の頬をなでる瞬間が好き
耳元で聞こえる吐息も、名前を呼んでくれる時も、全部
甘い感覚に酔わされる中、少し目を開けばあの緑色の瞳が…
一瞬、黄色い瞳が重なって見えた
目元のほくろ…
A
「…と、らくん…?」
千冬
「…A…?」
『Aっ…』
千冬の姿に、トラくんが重なる
どうして、こんな時にトラくんが…
私のことを心配そうに覗き込む千冬
そうだよね、こんな時に他の男の人の名前なんて…
千冬
「A、大丈夫か…?」
『大丈夫だから
俺だけは、ちゃんとそばにいるから』
フラッシュバックする、あの日の記憶
ひんやりするシーツの感触と黄色い瞳
耳元で聞こえるトラくんの声
満月を見上げる、トラくんの姿…
私、あの日…
蘇る記憶に、震える唇
A
「…ち、ふゆ…
…ごめんなさい…
私っ…」
千冬
「…いいよ、言わなくて、いいから…」
一気に押し寄せる罪悪感
この様子だと、千冬は知っているんだ…
震える口元を、思わず手で隠す
A
「…ご、ごめんなさいっ…
私、あの日トラくんと…」
あの日の、やり場のない悲しみ
トラくんに、縋ってしまった…
あの日、トラくんに抱かれた…
千冬
「A、大丈夫だから
落ち着けよ…」
A
「どうして…?
千冬、知ってたの…?
知ってて、それを黙ってて、私とやり直そうって言ってるの?
私は、都合よく自分の記憶から消してたのに…」
私、最低だ
千冬のことも、トラくんのことも傷つけていたことを、忘れてた
千冬
「…A…
その時、俺たちは別れてたんだ
だから、その間のことは、いいにしよう…」
A
「なんで…、そんなこと言えるの…?
怒っていいんだよ、嫌っていいんだよ…」
千冬
「怒らないし、嫌わない
Aのことも、一虎くんのことも、責めたりしない
元を辿れば原因は俺
あの時のAには、一虎くんが必要だった
それだけだろ」
優しい目で、千冬はそう言った
あなたは、優しすぎるよ…
千冬
「今、俺の目の前にAがいる
この先も…
それだけで、俺は十分だ」
A
「千冬…」
千冬
「もしお前がどうしても自分を許さないなら…
自分を許せないAごと、俺はAの全部を愛せるから
だから、自分を責めるな」
どこまでも、あなたは優しい
あなたに愛されてる私は、幸せだ…
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神奈月(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。お話は佳境ですが、みなさんに楽しんでもらえるようにがんばります。 (2022年11月27日 7時) (レス) id: d80d51a44f (このIDを非表示/違反報告)
あい - いつも更新を楽しみにしています。千冬と一虎、これからヒロインとどんな結末が待ってるのかとても楽しみです (2022年11月26日 16時) (レス) @page39 id: c280eab537 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年11月1日 13時