14 ページ14
最近は1人で来ていた埠頭
久しぶりに、Aと来た
俺が先にバイクから降りて、Aが降りるのを手伝う
手を貸してやると、小さくありがとうと、Aは言った
突き放したことを何回も後悔して、この先もAと一緒にいたいと再認識した
都合良すぎるのはわかってる
それでも、もう一度、チャンスがほしい
Aをバイクからおろして、俺はフェンスに体を預けた
Aはバイクの脇に立ったまま、なぜか動かない
海の先に見える工場夜景はいつもと変わらない
千冬
「Aと別れてから、何回もここに1人で来た
ここの景色はいつ来ても変わらねぇな…
都合良すぎるのわかってるけど…
俺、今度こそAのこと…ーー」
途中まで言いかけたとき、Aが急に後ろから抱き着いてきた
千冬
「…A…？」
名前を呼んでも、何も答えない
ただ、後ろから回された腕に微かに力が入るのがわかった
千冬
「どうしたんだよ、急に…」
A
「…ねぇ、千冬…」
名前を呼ばれると、少し腕の力が緩んだ
振り返ると、Aと視線が合う
すっ、とAの両手が俺の両頬に添えられ、Aは言った
A
「今、あなたの目の前にいるのは、誰…？」
千冬
「…A
場地、A…
俺が、この先もたった1人だけ、守っていきたい女」
A
「私のこと、まだ、場地圭介の面影と重なる…？
私が、場地圭介に見える…？
あなたの想いは今も私に向いてる？
場地圭介は関係なく、私が見えてる…？」
目にいっぱいの涙をためて、Aはそう言った
別れる時に、Aに伝えたことだ
場地さんの遺志か、自分のこと想いかわからない、と
そのときのことを、Aが言っている
千冬
「…お前、思い出したのか…？」
A
「…それより、ちゃんと答えてよ
あの時も、ちゃんと答えてくれなかった…」
頬に添えられたAの手に、自分の右手を添える
千冬
「お前は場地A、場地圭介じゃない
ちゃんと、お前のこと見える
でも、気付いたんだ
場地さんの遺志を大事にしたいのも、俺の本当の想いだから
一虎くんからも、場地さんの母親からも、お前のこと託された
託してくれたいろんな人の思いに俺は応えたい」
Aは大粒の涙を流し始めた
頬に添えられてたAの手が、力なく下ろされた
俺、Aのこと泣かせてばっかだな…
そっと抱き寄せると、前と変わらないAの温もり
千冬
「松野千冬は、場地Aを愛してる」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神奈月(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。お話は佳境ですが、みなさんに楽しんでもらえるようにがんばります。 (2022年11月27日 7時) (
レス) id: d80d51a44f (このIDを非表示/違反報告)
あい - いつも更新を楽しみにしています。千冬と一虎、これからヒロインとどんな結末が待ってるのかとても楽しみです (2022年11月26日 16時) (レス) @page39 id: c280eab537 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神奈月 | 作成日時：2022年11月1日 13時
