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一虎
『千冬、んな顔で店に立つなよ
客が引いてるだろ』
わけのわからないネット記事を見た翌日
俺は相当ひどい表情で仕事をしていたらしい
一虎くんにそう言われ、半ば強引に店頭から裏の休憩室に追いやられた
何も、気力が湧かない
結局、昨夜はAからの連絡はなかった
先ほどから、テレビはAの事務所が映し出されている
ネット記事に反応した記者たちが、記事の真偽についてコメントを求め、押しかけているようだ
あることないこと、憶測ばかりが飛び交っている
テレビのコメンテーターは、憶測の記事に翻弄され批判的なコメントばかり…
テメェら、Aの何を知ってんだよ…
怒りを覚えるが、本当に何も気力が湧かなくて、ただぼぉっとテレビの報道を見ている俺…
そんな時、パチッとテレビが消えた
一虎
「…今は、見ねぇ方がいいだろ」
千冬
「…はい…
すみません、店の方…」
一虎
「俺1人の時は、昼休憩くらいしっかりとらせろよ？
働き方改革ってやつな
入り口はcloseの張り紙してきた」
疲れた、と言いながら一虎くんは俺が座るソファの隣にドカッと腰掛けた
千冬
「ほんと、すみません…」
一虎
「気にすんな
こうゆう時はお互い様、ってやつだろ」
そう言いながら、俺の目の前に缶コーヒーを差し出してきた一虎くん
俺が前々からよく買って飲んでるやつだ…
千冬
「…あざっす…」
一虎
「…食う気しねぇかもしんねぇけど、なんでもいいから食え」
ドサッとビニール袋をテーブルに雑に置く音がした
…中にはおにぎりやサンドイッチが入ってる
1番取りやすい場所にあったおにぎりを１つ手に取り、口に入れるが、なんの具が入ってるのか、わからない…
味、なんも感じねぇや…
やっとの思いで、おにぎり一個を食べ終えた
…食べるのが辛いくらい、メンタル弱ってんのかな、俺…
一虎
「…さて、俺は仕事戻るぜ
気が向いたら戻ってこいよ
ただ、さっきみてぇなツラだけはすんなよ」
千冬
「…はい、いろいろすみません…
もう少ししたら、そっちに戻りますんで…」
一虎
「ぉぅ
期待しないで待ってる」
笑いながら、一虎くんは店頭に戻って行った
…一虎くんなりに、すげー気を遣ってくれてる…
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作者名：神奈月 | 作成日時：2023年11月5日 13時
