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ウサギに案内され、たどり着いたのはさっきの場所から5分もかからない場所

建物の解体現場だ

今日は日曜日だから工事は休みらしく、人はいないし音もしない

普段なら工事で開かれているだろう入り口も今日は固く閉ざされている

…どうするか…

ウサギはこの先に行けと言っているし…

何より、Aの気配がする

正面から入れないなら、上空から入るしかないか

使い慣れた術式で、あっという間に両足が地面から離れる

一気に高度を上げ、解体現場を上空から見下ろす

…呪霊の気配も、呪詛師の気配もない

解体現場を仕切るフェンスを上空から通り越して、僕は解体現場の中に足を踏み入れた

Aの気配は、建物の中だ

解体現場といっても、まだ着手されていない

古い洋館が、こんな場所にあったなんて…

重厚な扉を開けると、ギィッと軋む音がした

扉の先には広いホールになっていて、豪華なシャンデリアや装飾品は埃をかぶっている

目の前にある大階段を見ると、階段を上がった先に人が倒れている


「A!」

僕は慌てて階段を駆け上がり、倒れているAの上体を起こした


「A、A!」

呼吸はある、脈もある

ただ、名前を呼んでも、軽く頬をさすっても、返事はない

過去の嫌な記憶が蘇る…


「…A…
 もしかしてまた、力を使ったのか…
 でも、どうしてこんなところで、何のために…」

僕の一瞬の気の緩みと油断がもたらしてしまった結果

過去に一度だけAが使った時間を操る力

強大な力を使う代償として、Aは長い時間を眠ることになってしまった

二度と戻らない、青春時代を犠牲にした…

??
『六眼の子よ…』

突然、脳内に響く聞いたことのない声

ハッとして顔を上げると、知ってるようで知らない強大な気配

僕は慌ててアイマスクを外した

力なく眠るAの側にたたずむ存在

長い白銀の髪

その容姿は男とも女とも判断し難い神々しい美しさ

初めて目にする、Aに憑いている神の姿


「初めまして、でいいのかな?」

時の神
『この姿では、初めてだな
 娘のおかげで力を蓄え、ようやく姿を現すところまできた』


「あなたがこうして僕と話するということは、何か伝えたいことがある、ということですね」

時の神
『…娘の覚醒まで、あと少し…
 我が器から離れるまであと少しだ…
 だが、なにやら不穏な空気が漂っておる
 注意を怠るな
 娘の命に関わる』

それだけ伝えると、時の神は姿を消した

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作者名:神奈月 | 作成日時:2024年1月20日 23時

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