刺客たち ページ18
古びた洋館の重厚な扉を開くと、目の前には大きな広間と大階段
今にも童話のプリンセスが優雅に階段から降りてきそうな感じだ
A
「すごい…
素敵なお屋敷だ…」
埃をかぶったシャンデリアや装飾品は、主人がいた頃と変わらないように見える
もっと朽ちていてもおかしくないだろうに…
誰かが定期的に手入れでもしているんだろうか…
ちょうどシャンデリアの真下、目の前には大階段
見上げると、大階段上がった正面には大きな鏡があり、階段は左右に枝分かれをしている
A
「美女と野獣のワンシーンみたい…」
大階段を登り、鏡の前に立つ
埃を被った大きな鏡
そこに映る自分の姿は埃でぼやけている
鏡の、ちょうど自分の顔の高さの位置を、少し手で触ると、ざらっとした埃が手についた
その瞬間だった
??
「会いたかったよ」
また、耳元で囁かれた、懐かしい声
ドキッとして鏡を見ると、自分の顔の横に、夏油傑の顔が見えた
A
「傑…!?」
突然、右側に感じた気配
顔を向けようとすると、その人物にいきなり背後から抱きしめられた
A
「…うそ…
これ、夢だよね…
傑が、いるわけない…」
傑
「しばらく会わないうちに、私のことは忘れてしまったのかな」
顔は見えない
でも、確かに傑の声だ…
ちらっと鏡を見ると、黒い法衣を着ている
最期に見た傑と、同じ格好だ…
どうして、あの日亡くなったはずの彼がここに…
あの日、悟は確かに彼を…
私が知らないところで、悟は傑を見逃したということ…?
…わからない
わからないけど、今、傑がここにいる…
傑
「ようやく、準備ができたんだ」
A
「準備…?」
傑
「そう
君を迎えにきたんだ」
A
「…あの日も、そう言ってた…」
傑
「A…
私と一緒に行こう」
腹部に回された腕に、さらに力が入るのがわかった
A
「…傑…
私の答えは変わらないよ
あなたとは、一緒に行かない
私は、悟と生きて行くって決めたから」
傑
「悟よりも私の方が君を幸せにできる
君が望むものを用意できる
だから、君が持つ神の力で、私とこの世界を変えて行こう」
ぞくっと、背筋を冷たい何かが走るような感覚
彼は、違う…
A
「…あなたは誰…?
あなたは、私が知ってる夏油傑じゃない」
振り返った瞬間、見えたのは確かに傑の姿
けど、その額には見覚えのない大きな縫い傷があった
傑
「おっと、残念
時間だ…」
その言葉と共に、私の意識は遠のいた
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作者名:神奈月 | 作成日時:2024年1月20日 23時