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深夜、隣で眠るAは時々悪夢にうなされる日がある

A
「…すぐ…る…
 戻って…」

また、あいつの名前を呼んでいる…

僕の唯一の親友、夏油傑

高専で共に学び、切磋琢磨してきた男

傑が離反するまでは…

僕と傑は高専からの仲だが、Aは違う

2人は幼い頃からの幼馴染だった

Aはよく呪霊に憑かれていて、それを祓っていたのは、他でもない傑だった

僕が祓った記憶は、あまりない

A自身は呪霊が見えないし、感じることもない

そもそも、神様が憑いてるのに呪霊がつくなんて、不思議なんだが…

まぁ、そんな彼女を幼い頃から近くで守ってきたのが夏油傑だ

初対面での僕の印象は最悪だったらしく、なかなか心を開いてくれなかったA

Aの幼馴染が呪術師の卵なのは知っていたが、まさか高専で同級生になり、しかも親友になるとは、当時は思ってもいなかった

当時の僕にとって、Aの幼馴染は恋敵以外の何者でもなかったから…

幼いながらも、気が付けば、僕はAのことばかり考えていた

強者が弱者を守る、という正論が嫌いな時期もあった

御三家に生まれて背負うものの大きさにイライラする時期もあった

それでも、Aはいつもそばで、そんな俺を諭してくれた

無理しなくいい、頑張りすぎなくていい

そんな彼女を、守ってやりたいと思うのは自然な流れだった

けど、後になって知った

無理しなくていい、頑張りすぎなくていい

それは、傑にもかけていた言葉

むしろ、器用そうに見えて実は不器用な生き方しか出来なかった傑

そんな傑の本質を見抜いてかけた言葉だったんだ…


「A…
 A、大丈夫?」

悪魔にうなされるAの体を軽くゆすって、起こそうとする
目はきつく瞑っていて、額には汗が…


「A、起きて
 大丈夫だから」

僕の声がようやく届いたのか、Aはゆっくり目を開けた

A
「…さ、とる…」


「うなされていたよ
 何か飲む?」

A
「…そぅ…
 起こしてくれてありがとう
 大丈夫…
 私が眠るまで、そばにいて…」


「わかってる
 僕はどこにも行かないよ
 ちゃんと、そばにいる」

A
「…うん…」

そう小さく返事をすると、またすぐに眠ってしまった

…きっと、朝起きたら今の会話は覚えてないだろうな…

でもいいさ

僕だけが知っている、君の姿だから…

17→←穏やかな日



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作者名:神奈月 | 作成日時:2024年1月20日 23時

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