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悟
「A、過ぎた時間は戻らない
逆に、未来に行くこともできない
それが普通だ
けど、君の力を使えば、時間を操作することは可能になるが、そのリスクは大きい
君は力を使った代償を払うことになる
そして、時間を遡り過去を変えれば、今が変わる
一瞬にして、世界が変わるんだ、誰も気がつかないうちに…」
A
「…わかってる
でも…」
悟
「もう、過ぎたことだ…
傑のことは…
申し訳ないが、Aがその身を犠牲にしてまで、過去を変える必要はない
傑もそんなことは望まないはずだ
誰よりも君を大切にしていたんだから」
そっと頬に添えられる悟の手
大きくて温かくて、安心する
A
「だからこそだよ…
私は、あの頃、傑の辛さを理解してあげられなかった…
あんなに、思い悩んでたなんて、気が付かなくて…」
悟
「君は力を使い、傑にやり直すチャンスを与えた
けど、結果は失敗
傑が選んだのは、同じ道だった
そして君は5年という月日を眠り続けた」
A
「…今でも、毎日のように後悔してる…
傑を救えなかったこと…」
悟
「君が後悔する必要はない
傑自身が決めたことだ」
A
「…それでもっ…」
悟
「A…
悠仁たちと食事したら、少し昔が懐かしくなったんだろ
今日はもう寝よう」
そう言うと、悟は私をヒョイっと横抱きにして立ち上がった
その瞬間、急に周りの景色が一変する
自宅の寝室だ
さっきまで高専にある悟の部屋にいたのに…
悟の瞬間移動、便利だなぁ、なんてのんきに考えていた
広いベッドにすとんっと下ろされると、ギシっとベッドが軋む音が響く
A
「…さ、悟…さん…?」
悟
「ん?」
気付けばベッドを背にして、悟の顔がすぐ近くに…
190センチの長身が覆い被さって来ると、身動きすらできなくなる
A
「今、今日はもう寝ようって言ったよね…?」
悟
「言ったよ?」
A
「…言った、よね…」
悟
「でも、眠っていいよ、とは言ってない」
そう言われると、抗うことなんてできない
端正な顔が首筋に寄せられて、悟の吐息を近くで感じる
彼が生きてるって、感じられる
呪術師は、過酷な仕事だと承知している
その特殊性から、家庭を持つ人は少ない
この人は、私には想像もできないような、大きな責任を負っている
そんなあなたの拠り所であり続けたい
それが、私の願い
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作者名:神奈月 | 作成日時:2024年1月20日 23時