15 ページ15
A
「すぐ持ってくるけど、上がって待ってて」
一虎
「いや、ここでいい」
家までトラくんに送ってもらい、玄関に入ると彼は足を止めた
リビングに置いてあったクリーニング済みのシャツを適当な紙袋に入れて、すぐに玄関に戻る
A
「これ、ありがとう
あと、あの時も、今日も、助けてくれてありがとう…」
おぅ、と彼は小さく言うと紙袋を受け取った
A
「それと、あの時…
…ごめんなさい、本当に
一瞬、魔が差して…」
言いづらくて、彼の顔を見れず、下を向きながら言う
バサっと紙袋が落ちる音がすると、両頬に彼の手が添えられて、無理やり顔を上げさせられた
一虎
「んな顔すんなって
元々悪いのは俺
お前が俺を憎いとか恨んでるとか、嫌いとか、そんなん当然なのわかってる
だから、そんな顔すんな」
子供の頃の、優しいトラくんだ…
憎しみに囚われて忘れていた
同じ幼稚園で、私が園庭でクラスの男の子に叩かれて泣いてたら、すっ飛んできて、男の子を叩いてしまって、自分より小さい子にそんなことしてはいけない、と先生に怒られていた
小学校の時、私のことをブスと言って来た男子に、
こいつのどこがブスなんだよ、好きな女にそんなアピールしかできねぇの、だせぇ
と相手に掴みかかって、先生に呼び出しされていた
いつも、私のために怒ってくれて、助けてくれた
その方法は確かに間違っていることも多かった
それでも、彼なりの方法で、守ってくれていた
怒りと憎しみに囚われて、彼の優しさの部分を、忘れていた
一虎
「…ぁー、わりぃ、嫌ならぶん殴っていいから…」
頬を両手で挟まれたまま、こつんっとトラくんが額をくっつけてきた
一虎
「こんなん、言う資格ねぇのわかってるけど…
俺、お前にはちゃんと幸せになってもらいてぇんだ
だからできるなら、お前の兄貴でいさせてくれ
…場地の代わりに」
A
「…トラくん…」
あなたの方こそ、悲しそうに、苦しそうに、そんな顔しないでよ
A
「…トラくん…
もう、圭介くんのこと、許すから…
もう、憎んだり、恨んだりするの、やめるから
だから、トラくんも、もうそんな顔しないで…」
私がそう言うと、トラくんは頬から手を離して真っ直ぐ私を見た
そうだ、彼は長い年月をかけて自らの行いを反省し、罪を償ってきたんだ…
157人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神奈月(プロフ) - 凍ったライムさん» ご指摘ありがとうございます。気付かずに申し訳ありませんでした。早急に対応いたしました。 (2022年9月25日 16時) (レス) id: 4cb915c5c4 (このIDを非表示/違反報告)
凍ったライム(プロフ) - コメント失礼します、オリフラついたままになっていませんか? (2022年9月25日 15時) (レス) id: 946d60cede (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神奈月 | 作成日時:2022年9月24日 15時