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A
「すぐ持ってくるけど、上がって待ってて」

一虎
「いや、ここでいい」

家までトラくんに送ってもらい、玄関に入ると彼は足を止めた

リビングに置いてあったクリーニング済みのシャツを適当な紙袋に入れて、すぐに玄関に戻る

A
「これ、ありがとう
 あと、あの時も、今日も、助けてくれてありがとう…」

おぅ、と彼は小さく言うと紙袋を受け取った

A
「それと、あの時…
 …ごめんなさい、本当に
 一瞬、魔が差して…」

言いづらくて、彼の顔を見れず、下を向きながら言う

バサっと紙袋が落ちる音がすると、両頬に彼の手が添えられて、無理やり顔を上げさせられた

一虎
「んな顔すんなって
 元々悪いのは俺
 お前が俺を憎いとか恨んでるとか、嫌いとか、そんなん当然なのわかってる
 だから、そんな顔すんな」

子供の頃の、優しいトラくんだ…

憎しみに囚われて忘れていた

同じ幼稚園で、私が園庭でクラスの男の子に叩かれて泣いてたら、すっ飛んできて、男の子を叩いてしまって、自分より小さい子にそんなことしてはいけない、と先生に怒られていた

小学校の時、私のことをブスと言って来た男子に、

こいつのどこがブスなんだよ、好きな女にそんなアピールしかできねぇの、だせぇ

と相手に掴みかかって、先生に呼び出しされていた

いつも、私のために怒ってくれて、助けてくれた

その方法は確かに間違っていることも多かった

それでも、彼なりの方法で、守ってくれていた

怒りと憎しみに囚われて、彼の優しさの部分を、忘れていた

一虎
「…ぁー、わりぃ、嫌ならぶん殴っていいから…」

頬を両手で挟まれたまま、こつんっとトラくんが額をくっつけてきた

一虎
「こんなん、言う資格ねぇのわかってるけど…
 俺、お前にはちゃんと幸せになってもらいてぇんだ
 だからできるなら、お前の兄貴でいさせてくれ
 …場地の代わりに」

A
「…トラくん…」

あなたの方こそ、悲しそうに、苦しそうに、そんな顔しないでよ

A
「…トラくん…
 もう、圭介くんのこと、許すから…
 もう、憎んだり、恨んだりするの、やめるから
 だから、トラくんも、もうそんな顔しないで…」

私がそう言うと、トラくんは頬から手を離して真っ直ぐ私を見た

そうだ、彼は長い年月をかけて自らの行いを反省し、罪を償ってきたんだ…

思い出のカケラを集めに…→←14



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神奈月(プロフ) - 凍ったライムさん» ご指摘ありがとうございます。気付かずに申し訳ありませんでした。早急に対応いたしました。 (2022年9月25日 16時) (レス) id: 4cb915c5c4 (このIDを非表示/違反報告)
凍ったライム(プロフ) - コメント失礼します、オリフラついたままになっていませんか? (2022年9月25日 15時) (レス) id: 946d60cede (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年9月24日 15時

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