21 ページ21
旧廃車場を後にし、Aはおすすめの店があると言って、晩飯そこに行くことになった
落ち着いたイタリアンの店は、今のAがいかにも好みそうな感じだった
話題は尽きないが、お互いに場地さんのことも、今日のことも、触れない
なぜ今日俺を誘ったのかも、Aは言わない
そのうち、話してくれるだろうか
A
「ねぇ、千冬?」
千冬
「ん?」
A
「このあと、最後にもう1箇所だけ付き合ってもらえる?」
穏やかだけど、少し悲しそうな顔をしている
お前、今日はずっとそんな顔してる
というより、初めて会った時から、どこか憂いを帯びた表情ばかりだ
千冬
「今日は1日って約束だろ
まだ時間あるから構わねぇよ」
A
「…ありがと」
最後に行きたいと言った場所は、とある埠頭だった
工場夜景が見える、静かな埠頭だ
潮風が、冷たい
Aは柵に手を添えると、静かに話し出した
A
「千冬…
今日は、何も聞かずに1日付き合ってくれて、本当にありがとう」
千冬
「なんだよ、急に
さっきも言ったけど、1日って約束だったからな
それに、嫌なら最初から来てねぇよ」
俺の上着をAの肩にかけて、隣に並んで立つ
その先に見えるのは工場の夜景
A
「千冬が風邪ひいちゃうよ」
千冬
「大丈夫
俺、丈夫だし」
そう言うと、Aはくすくす笑った
A
「ありがとう
…千冬にありがとうって言うの、何回目だろうね…」
わかんね、と言うと、Aも数えてないもんねー、と言った
A
「…今日、最初に行った海ね、子供の頃に圭介くんと涼子ちゃん…
ぁ、涼子ちゃんって、圭介くんのお母さんね
あと、私の母と、何回か行ったことあるの
海に着くとすぐに裸足になって、思いっきり海に飛び込んで…
服のまま入るから、圭介くん、いつも涼子ちゃんに怒られてたんだ…」
千冬
「場地さんらしいな
で、おばさんの強烈なケリとか入るんだろ?」
A
「そうそう!
稽古つけ直してやるー!って感じで」
なんか、目に浮かぶし、似たような光景を目にしたこともあるな
A
「次に行った空き地になってたとこは、駄菓子屋があったの
よく、圭介くんと一緒に行ったんだ…
ファミレスは、私が中学に入った時に、初めて友達だけで食事をしたところ
圭介くんが、東卍の創設メンバーを紹介してくれたとこなんだ…」
157人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神奈月(プロフ) - 凍ったライムさん» ご指摘ありがとうございます。気付かずに申し訳ありませんでした。早急に対応いたしました。 (2022年9月25日 16時) (レス) id: 4cb915c5c4 (このIDを非表示/違反報告)
凍ったライム(プロフ) - コメント失礼します、オリフラついたままになっていませんか? (2022年9月25日 15時) (レス) id: 946d60cede (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神奈月 | 作成日時:2022年9月24日 15時