この運命は恋ですか？ 4【桃】

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さ「A！！」

「…え？さーく…ん？」


涙でぼやける視界でもわかる。
彼がいる。


「さーく…んっ…なんでっ…！？」

さ「A…！」


強く抱きしめられて、苦しいはずなのに嬉しかった。
大好きな温もりを思い出してしまった。
突き放さなきゃいけないのに、離せなかった。


さ「ごめん…、俺が我慢できねぇ。」


ただでさえ強いのに、まだぎゅっと抱きしめられる。
力の込めすぎで震えているのか、感情が昂って震えているのか、さーくんの震えが背中越しに伝わる。


さ「A、帰ろ？」


耳元で、強いその手に反して少し上擦った優しくて甘い声。


「…帰る。」


咄嗟に出てしまった返事。

さーくんは体を離してほっとしたように微笑んだ。
その瞳は涙が溢れる手前。
思わずその頬に手を乗せさーくんの涙を拭ったら、さーくんはポロポロと泣き出した。


さ「ごめん、本当ごめんね。」

「さーくんは何も悪くないよ。」

さ「Aのこと、待ってやれなかった。もう限界。無理だ。」


へらりとわらう。
普通に放送してたくせに。
にぃにと今日会ったから私のこと思い出した？
可愛くない言葉が頭に浮かぶ。
保身だ。
マイナスに、マイナスに考えておけば傷付かない。


「さーくんは大丈夫だよ。私がいなくても。」


さーくんは一瞬眉を顰めた。
それでもすぐに首を横に振る。


さ「無理だよ。改めて気づいた。俺、マジでAが居てくれるだけでいいんだ。居てくれないとマジで元気なくなる。」


触れていたいというように、さっき離れた体がまた引き寄せられる。


さ「この2週間頭おかしくなるかと思った。」


心の中でカチカチに凍ってたものが、じんわりと溶け出した。
急に溶け始めると少し痛い。
今溢れてる涙はその痛みのせい。


さ「今後おんなじようなことあっても、Aが苦しくなるのわかってても手離せねぇかも…ごめんな。」


必要とされたかった。
誰でもいい、じゃなくて私がいいと言ってくれる存在が。
誰かの代わりとか、とりあえずその場に私が収まるとか、そんなんじゃなく、私という存在を肯定してほしかった。
さーくんの一つ一つの言葉が欲しかった言葉そのもの。
嘘だ、期待するな、って言い聞かせようとしても、さーくんの頬にうっすら残った涙の跡が事実証拠として残っていた。


「帰ろ。」

さ「うん。」


大きく首を縦に振るさーくんは、何だか少し子供っぽくて可愛かった。

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