この運命は恋ですか？ 4【桃】

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Satomi Side

注射が怖いらしく涙目のA。
強がりなAのそんな表情がみれるのは、俺に気を許してくれているからだと思うと嬉しく思う。


「怖いぃ〜…。」


涙を堪えながら唸るAの後ろに回って手を重ねれば、震えがぴたりと止まった。


さ「震えるとまたずれて怪我するよ。」


“また“と言ったのは抑制剤の注射を打った時。
あの時はまだAのことも全然知らなて、顔すらほぼ見えてない状態。
俺は締め出されていたから何も知らなかった。
後から莉犬が教えてくれたこと。
俺のせいで痛い思いをさせてしまった。
そして今回もまた。


「わかってる…。」


強がるAは意を決したように大きく息を吸い込んだ。


「うぅ〜…。」


それでも踏ん切りがつかないのか、震えてはいないものの、相当な力で注射器を握っているのが、重ねている右手越しに伝わってきた。

見るから痛いんだよ。

そう思ってAの目を空いた手で隠す。
小さなAには俺の片手で簡単に両眼が塞げてしまう。
こんな小さな体に負荷を背負わすのか、と思うと、俺自身も相当な覚悟を持つべきだと改めて感じた。
Aと、その周り、全て守れるくらい強くならなくては。


さ「刺すとこ見るな。」

「はぃ…。」


声が震えている。
ごめん、Aにばっかり痛い思いをさせて。


さ「いくよ？」

「ん…。」


左手に伝わる感覚でぎゅっと目を瞑ったのがわかる。
Aの右手を重ねたまま、白くて細い太ももに、躊躇いなく注射器を差し込んだ。
こういうのは躊躇したほうが痛いから。

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