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後少し遅ければそれで傷つけていたのだろう。
そっと触れた右手から割れたコップの破片を奪う。
抵抗なく開かれるその手も、Aの助けての声だ。

コップもお皿も、ガラス類はこの部屋からは排除しなければいけないかもしれないな。
子供じゃないってあまりにいじけるものだから前は諦めたが、プラスチックのものを探さなくては。
服は…今後は生地も考えなきゃいけないかな。
きちんとガラスを手放したAの頭をいい子、と撫でながら考える。


「さ、寝ようか。」

「眠くない。」

「大丈夫。疲れてすぐ眠れるよ。」


何もない部屋。
机もない部屋。
布団と枕、ビリビリに破れてワタの見えている掛け布団、数冊の本、それだけの部屋。
片隅にはさっき捨てたものが詰まったゴミ袋1つ。
その部屋で電気を薄暗くし、再度Aを抱きしめる。


「眠れるよ。」


眠って、朝を迎えて、また僕の前で笑って。
おはよう、って伝えるから、Aは笑って僕に挨拶を返すんだ。
ゆっくり朝ごはんを食べたら手を繋いでデートをしよう。

今のAにとっては耳を塞ぎたくなるだろう明るい明日の話をする。
体を少し離せば、苦痛に顔を歪めていた。

大丈夫、怖くないよ。
明日は怖くない。

そう伝えるように、への字に曲がった唇にキスをした。

大丈夫、眠れるよ。

床の硬さを感じる布団にAを押し倒す。
逃げられないように覆いかぶさる。

大丈夫ー・・・

ー・ー・ー・ー・ー
行き場のない苦しさ、原因のない虚しさ、そういう時ってなぜか自分をさらに下に下に落としたくなる。落ちて落ちて落ちて這い上がれないところまで落ちて、明るいところを見ていいなぁ、って羨む。そこから登ることなんてできないのに、その光が届く位置にいることが安心する。そんな自分に酔うような感情すら、そのままとして受け入れたい人生。

終わり ログインすれば
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唯凛(プロフ) - かかおさん» コメントありがとうございます!お返事遅くなりましてすみません。大好きなアイドルグループ…!?もしや同志様…!?どのグループだ!?と勝手に興奮しておりました。私の好きな曲・歌詞の世界観が少しでも伝わるように表現できていたら嬉しいです。 (2022年4月23日 22時) (レス) id: 00bd452271 (このIDを非表示/違反報告)
かかお - 初コメ失礼いたします。別作品からここへ飛んできたのですが、もう!!ほんとに!!大好きなアイドルグループの歌詞を題材にされた大好きな人たちの物語…最高すぎます!!さらに文章も素敵で…ほんとにほんとに、ありがとうございます!!最高です!! (2022年3月24日 5時) (レス) id: 162bd117a7 (このIDを非表示/違反報告)
唯凛(プロフ) - 雨歌さん» コメントありがとうございます。文章に含められなかったところを書いているところまで読んでいただけて嬉しいです!!色々詰め込みすぎて読みづらいかなーと不安になる時もあるので、文に込めた想いが伝わっていましたら幸いです。 (2021年6月16日 21時) (レス) id: 1df965d2ca (このIDを非表示/違反報告)
雨歌 - 唯凛さんの最後にかいてある言葉にめちゃくちゃ泣きそうになりました()文の書き方も上手いし、キュンキュンして最高でした! (2021年6月2日 16時) (レス) id: ed2ca2f433 (このIDを非表示/違反報告)
唯凛(プロフ) - みなさん» みなさんこんなところまでありがとうございます〜!!曲イメージで書くのが好きなのと、向こうの夢主ちゃんのキャラでは難しいものとか、思いついた時用に作ってしまいました〜(°▽°) 見ていただけてとっても嬉しいです〜!! (2021年1月2日 14時) (レス) id: b5bb78bb55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:唯凛 | 作成日時:2021年1月2日 12時

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