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明らかに困った顔のA。
あぁ、終わったな。
もう帰ろ。


「ころちゃん待って…!」


パシリと腕を掴まれる。


「待って…。」


力無くその手はスルリと抜けそうになるが、既のところで指先が絡まり合う。

やめてよ。
期待しちゃうじゃん。

初めて繋いだその手を離したくないと思った。


「…何で一人で苦しむの?何で苦しいのは自分だけなんて思うの?」

「…。」

「私だって苦しかったよ!!…ねぇ、私の気持ちは?」

「もうやめてよ。そうやって期待ばっかさせるから…。」

「期待すればいいじゃん。…期待してよ…。」


なんでAも泣きそうなの?

絡まってた右手は何かを確信させるように恋人繋ぎに変えられる。


「私、かっこいい人が好きだな。」


そんなこと言うなよ。
無理だよ。
僕カッコ悪いもん。


「ころちゃん、ちゃんと言って?」

「…っ!A…好き…。僕のっ…彼女になってくださいっ…!」


離したくなかった手を離して腕を広げる。
結局抱きしめられもしない弱さ。
Aは呆れたように笑って僕に抱きついた。
やっと安心して抱きしめた。

ずっと抱きしめたかったその体は、想像してたよりも細かった。
壊れてしまいそうだと思った。
だから、僕が守らなきゃ。
そう思ってほんの少し力を込める。


「よろしくお願いします。」


耳元にふきかかる息が現実なんだと教えてくれた。


「ふふっ。泣き虫。」


体を離したAにそっと涙を拭われる。
かっこ悪りぃ。
でもその温もりが欲しくて、されるがままに受け入れた。


「ねぇ、泣いてないで早く買い物…デート行こ?」


うん、って頷きながらも抱きしめる。
行けないじゃん、って笑ってる。
僕の腕の中で。


「A、これ。」


Aを抱きしめながら引き寄せた鞄の中から、渡せなかったプレゼントを取り出す。


「やっぱ誕プレじゃん!!」


好きなブランドにテンションが上がって少しだけ離れる距離。
寂しく思いながらも、こちらの方がAの表情がよく見える。


「ありがとうっ!」


きれいに笑う姿にまた胸が締め付けられながらも、もうこの笑顔は僕のものなんだ、とじんわり温かくなった。

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唯凛(プロフ) - かかおさん» コメントありがとうございます!お返事遅くなりましてすみません。大好きなアイドルグループ…!?もしや同志様…!?どのグループだ!?と勝手に興奮しておりました。私の好きな曲・歌詞の世界観が少しでも伝わるように表現できていたら嬉しいです。 (2022年4月23日 22時) (レス) id: 00bd452271 (このIDを非表示/違反報告)
かかお - 初コメ失礼いたします。別作品からここへ飛んできたのですが、もう!!ほんとに!!大好きなアイドルグループの歌詞を題材にされた大好きな人たちの物語…最高すぎます!!さらに文章も素敵で…ほんとにほんとに、ありがとうございます!!最高です!! (2022年3月24日 5時) (レス) id: 162bd117a7 (このIDを非表示/違反報告)
唯凛(プロフ) - 雨歌さん» コメントありがとうございます。文章に含められなかったところを書いているところまで読んでいただけて嬉しいです!!色々詰め込みすぎて読みづらいかなーと不安になる時もあるので、文に込めた想いが伝わっていましたら幸いです。 (2021年6月16日 21時) (レス) id: 1df965d2ca (このIDを非表示/違反報告)
雨歌 - 唯凛さんの最後にかいてある言葉にめちゃくちゃ泣きそうになりました()文の書き方も上手いし、キュンキュンして最高でした! (2021年6月2日 16時) (レス) id: ed2ca2f433 (このIDを非表示/違反報告)
唯凛(プロフ) - みなさん» みなさんこんなところまでありがとうございます〜!!曲イメージで書くのが好きなのと、向こうの夢主ちゃんのキャラでは難しいものとか、思いついた時用に作ってしまいました〜(°▽°) 見ていただけてとっても嬉しいです〜!! (2021年1月2日 14時) (レス) id: b5bb78bb55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:唯凛 | 作成日時:2021年1月2日 12時

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