短編集【stxxx】

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そう。
彼が機嫌が悪くなったのは、明日が私の誕生日だから。
その誕生日に、私は仕事が入っていた。
休み希望を出さなかったら、たまたま仕事が入っていた。
しかも夜勤。
職場で誕生日を迎える、ただそれだけ。
予定もなかったから別にいいや、と思っていた。
1人で誕生日を迎えるより、職場の人と一緒にいれる方が寂しくない、とすら思っていた。
まさかころちゃんがくるなんて予想外だったわけだ。


「…確かに約束してないし、僕は彼氏でもなんでもないけどさ。」


「じゃあなんで僕の誕生日は休みとったんだよ。」って小さく呟いた言葉は、聞こえなかったふりをした。

私たちの関係はとても複雑だ。
恋人未満、友達かも定かではない。
それでもなぜか私たちはお互いとのスケジュールを優先させている。
彼氏でもないころちゃんのために休みを取る私。
彼女でもない私のために忙しい中時間を空けてくれるころちゃん。

でも期待はしない。
してはいけない。
傷つきたくない。


「明後日は休みだから、仕事終わってからはたっぷり時間あるよ。だからそこで一緒にいよ？」

「…じゃあここで待ってていい？」

「え？」

「…Aの家でAの帰り待ってる。」


ころちゃんを信用していないとかではない。
ただ、男の子を自分のいない間に自宅に置いておくというのは如何なものか。
そう考えたのも数秒。


「いいよ。」


まぁころちゃんだし。

そろそろ時間がやばい。
それこそ本当に遅刻してしまう。


「じゃあ行ってきます。…くれぐれも変なことしないでよ？」

「僕を誰だと思ってんの。行ってらっしゃい。」


さっきまで拗ねていたけど、今度は優しい顔で笑って手を振ってくれる。
人に行ってらっしゃいって言ってもらうの、何年ぶりだろう。
なんだか少し嬉しかった。

誕生日まで、あと1時間10分。

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