短編集【stxxx】

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るぅちゃんが図書室に向かってたのは見えてたんだけど、クラスメイトに引き止められておしゃべりしてたら出遅れてしまった。
まぁ仕方ない。
ただでさえ妬み僻みを受けやすい性格。
少しでも当たり障りなく学校生活を送るためには、無視なんてできなかった。
しかも話題が恋バナだったから、つい私も話し込んでしまった。


「Aちゃん、なんでモテるのにあんな人がいいの？」

「あんな人、なんて言わないでよ〜…。あっ、でもみんなにるぅちゃんのカッコ良さ、バレたくないかも…。」

「何それ〜。でも、学年1の美少女が、隠キャくんにぞっこんだから、なんかこっちも安心だよね。」


さっきから本人めの前で人の好きな人の呼び方酷くない！？
まぁこういう話をして、私はこの人が好きだから、手を出さないでね、って牽制。
女子の恋バナってそんなもんでしょ。


「ねぇねぇ、Aちゃんはあの人のどこが好きなの？」

「えっ…。優しいところかな。」


嘘。
それだけじゃないよ。
優しくて、かっこよくて、背も高い。
なんだかんだ私といつも一緒に帰ってくれて、帰る時もね、さりげなく車道側歩いてくれる。
優しいのに、ちょっと意地悪してくるところとかも、実はちょっときんゅんとしてる。
たくさん好きなとこはあるけど、全部秘密。
無難なことを言っておけば、みんなるぅちゃんを恋愛対象として意識しないでしょ？


「あー、でも優しいよね。この前掃除当番でさ、ゴミ捨てに行こうとしたらめっちゃ重くて。そしたらるぅとくんが僕が持ちますよって持ってってくれたんだよね。」


またそうやってかっこいいことするんだ。


「私この前それと似たようなこと山田くんにされちゃった！」

「いーなー！」


山田くんはクラスでイケメンと話題の男子だ。
文武両道なんでも出来てイケメン…らしい。
るぅちゃん以外興味ないからわかんないや。


「Aちゃんとライバルになるくらいなら山田くんがいいよね〜。」


でた、女子の牽制。
怖いなー。
私にこっちに来んな、と言わんばかり。
言い方きついし、そんな話男子が聞いたら嫌われるのにね。
心配しなくても私はるぅちゃん一筋だ。
むしろそっちがこっち来んなよ。
言い返したいけど言わず笑って誤魔化す。
モヤモヤも、飲み込んで仕舞えば波風立たない。
山田くんの話で盛り上がって仕舞えば、私は聞き手に徹する。
そうやって、考えて、少し天然を装って生きていくんだ。

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