話したい2【桃】

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Satomi side


さ「俺にはくれる？」


ちょっとした悪戯のつもりだった。
ちょっと困る顔を見たかったと言うか、あわよくば照れてくれないかな、と。

だって、半分近く食べられたクレープは、どこを齧っても間接キスだ。

意識して欲しいのと、ちょっとした悪戯心。

なのに、まさか差し出されるなんて思わなかった。
自分はとことん予定外のことに弱いらしい。
思わず固まる。

何故俺がそんな反応をするのか、何も分かってないAちゃんは、どうぞ、と言わんばかりにクレープを差し出す。

少し躊躇ったが、あまりに純粋に俺をみる目に敵うわけがなく、ドキドキしながらクレープを口にした。
意識しすぎて、味どころじゃない。
それに反して、Aちゃんには全く意識されてないことが少し切なかった。

甘いのに、切ない酸っぱさは、いちごのせいか。


ジ「間接キスやん…。」


ジェルの一言で、やっと意識したのか、焦ったように頭を下げるAちゃん。

むしろ俺と間接キスが嫌なのはAちゃんではないのだろうか。
俺はむしろ嬉しいというか…。


俺を意識してない、というわけではなく、そもそも間接キスに対する意識の薄さからくるものだった。
安心するとともに、もし今後、他の男と仲良くなったとしても、何も気にしないのか、と思うと少し苛立つ。
なーくんのいう通り、少しくらい気にして欲しい。
まぁ馬鹿な男って俺のことなんだけど。

少し俯きがちにクレープを食べ進めるAちゃん。

俺が齧ったところを食べる時、少し躊躇ったのは意識してくれたから？

食べてる姿を隠すように俯くから、また口の端に生クリームがついていた。
とってあげようと手を伸ばしかけてやめる。
俺からの視線を逃れるようにクレープを食べるAちゃんに、意識されたからこそ拒否されたら、多分傷付いちゃうから。
だから気付かないふりをした。


こ「またついてる。」


ころんのその言葉に、とって、と言わんばかりに顔をあげるAちゃん。
さっきとは違って優しくクリームを拭うころんに嫉妬したのも事実で。

相反する気持ちがごちゃごちゃと渦巻く。


クリームみたいに甘く感じたら、コーヒーのような苦さもあって。


あぁ、恋ってめんどくさい。

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