3話 ページ4
温かいうちにつゆまで飲み干したAは満足気に息を吐いて、食器を洗ってから再びスマホを手にとる。
『リピ確。まじ美味しかった』と感想を送ればすぐ既読がついて「そりゃ良かった」と返信が来る。
絵文字もない、華のJKにしてはやけにシンプルなトーク画面を見て口角が上がる。
しかも内容は出汁についてときた。「婆さんかッ！」というヘビースモーカー美女のツッコミを思い出して苦笑する。
ちなみに、その会話を偶々聞いていた野薔薇は思いついたような顔をして何処かへひとっ走り行っていた。その時買ったらしい乾燥わかめが「間違えちゃったてへぺろ」のメッセージカードと共に届けられることを、この時の私はまだ知らない。
暫くそのままネットショップを見てグータラしていたら、20時のタイマーが鳴ったので、急いで制服に着替えて外に出る。
ここの施設、どうやら近くに地縛霊的なヤツがいるらしく、
地縛霊というのは普通の呪霊とは違って、そこそこ面倒くさいタイプだ。今まで眠っていたから重要視されておらず後回しにしていたら、工事の騒音で目が覚めてしまったらしい。
地鎮祭は行っていたようなのでそこまで大きな被害はないそうなのだが、その地鎮祭、うちの祖父が担当していたらしく、私がここに来させられたのはその繋がりからでもあった。
これは余談だが、祖父はそこそこ有名なお寺の人というだけで、今年の元旦では喉に餅を詰まらせるような一般的な高齢者だ。対して祖母は御三家とはまた別の家の血筋の如月家現当主。その息子である父は呪力を持っていなかったので祖父のお寺の方を手伝っていて、母は医者、娘はめでたく呪術師と、なかなか忙しい家族なのだった。
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作者名：雨が好きな人 | 作成日時：2023年1月11日 18時
