第二十一話 幸福の定義 ページ23
は、と言って見開かれたグルッペンさんの瞳に、小さく私の影が落ちる。
『僕は、聖女様に「私のために死んでくれ」と言われたんです。「あなたがいなければ私は幸せなの」とか、あと……何か、「a国の皇宮の人たちは必死になってAを探してる」とか…？』
確かそんな感じだったと思う。意味はよくわかんないけど。
gr「ほう…」
その短い感嘆詞を促しと捉え、私は続けた。
『きっと、僕が彼女の前に現れては都合が悪いんでしょう。僕は彼女に破滅の未来を教えました。それでもあえて彼女がその道を選ぶのなら、僕にはそれを止める理由も術も無いですから。ならばいっそ…好きなように壊れて、狂って、堕ちればいい』
gr「…それは、お前が"聖女"を切り捨てたいからか？お前の記憶と違う、お前をぞんざいに扱う"聖女"を地獄に落としたいからか？」
小首を傾げるグルッペンに向かって、かぶりを振る。
『いいえ。手の届かない遠くに行ってくれた方が、諦められるからです。言ってしまえば、僕の防衛機制…信じてた
"親友"なんて、所詮私の哀れな幻想でしかなかったのだ。そう思ってしまえれば、不思議と心は少しも痛まないから。
gr「そうか…それで？」
『……はい？』
それで、とは。思わず訊き返すと、グルッペンさんはゆったりと椅子に座り直して言った。
gr「それで、Aはどうしたい？」
…うーん、どうしたいか、ねぇ。何にも考えてなかったと言えば嘘にはなるが。悩む私の姿を見て、グルッペンさんは言葉を継ぐ。
gr「訊き方を変えよう。今のお前にとっての"幸福"とは何だ？」
『難しい質問ですね』
月奈のために、という目標を失った今、私が軍人として鍛えてもらう義理は失くなってしまった訳で。面白がるような光をたたえた紅を見据え、ハッキリ答える。
『ここにいられること、ですかね。僕は心の休まる居場所を貰えたというだけで、とても気持ちが安らぎます。本気で僕を助けてくれる人がいて、心配してくれる人がいて……好いてくれるような人たちがいて。幸せですよ、今この瞬間も』
そう微笑めば、グルッペンさんはフッと笑って私の頭を撫でてくる。
gr「…それが聞けただけで、俺は十分だ。下がっていいぞ、長々とすまなかった」
『では失礼します』
去り際、いつかのように問いを投げられる。
『＿＿＿＿』
小さく言って、私は廊下へと出ていった。
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あくら、 - 久しぶりに夢小説読んだんですがゆうり様の作品最高すぎですね(*´꒳`*) (2022年6月1日 17時) (
レス) @page3 id: d4efbb01c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 楽しく読まさせていただきました。インクではないですが、洗剤で紙に文字を書き、乾燥させてから書いた紙を濡らすと文字が浮かび上がるそうですね。 (2022年4月8日 21時) (レス) id: 1e5fccc68e (このIDを非表示/違反報告)
カナリア - 安らかに眠れwwとびらww (2021年1月10日 11時) (レス) id: e6d62c8537 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 毎回夢ちゃんの葛藤、そして皆からの愛情が伝わって胸きゅんが止まりません...これからも応援してます！ (2020年12月24日 12時) (レス) id: 3009402549 (このIDを非表示/違反報告)
しぇけなべいべ(プロフ) - 少し。ほんの少し。書き方変えましたか......??まぁ。それは置いといて。毎日更新ありがたいです.....!!!!! (2020年12月20日 23時) (レス) id: a746dec877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2020年12月7日 19時
