第十四・五話 行かないで zm side ページ16
「…ん？」
どれくらい寝とったんやろか。ふと目を覚ますと、しんとした医務室の中でカタカタと薬棚を開けるような音だけが響いていた。
『ぅ…』
横から高い声が聞こえぼんやりする意識で隣を見ると、あどけない表情で眠るAが居った。
「！？」
何で居んねん、と叫びそうになったが、起こしたら悪いかと慌ててその言葉を呑み込む。腹がやけにあったかいと思っとったけど、そういう事やってんな。赤毛の向こうには、ふわふわの栗色も横になっている。
「(何でショッピまで居んねん……あかんわ全然覚えてへん)」
首を捻って考えても、寝落ちる前の事が何も思い出せへん。熱出した、までは分かるんやけど…
「(てか…いや、狭……)」
医務室のベッドって、普通3人とかで並んで寝るものやないと思うねんけど。まあでもショッピくんが考えなしにこんなんする訳ないし、多分やけどかつての俺が変な事言ったんやろな。とりあえずAがチビで助かったわ、シッマみたいなデカイ奴やったら間違いなく俺がベッドから弾き出されとった。
「(やっぱ小さいわ…ほんまに17なん？)」
俺らが17だったときのロボロより小さいで。それとも、Aのいた世界ならこれが普通なんやろか。『うちの国は平均身長低めです』って言うとったし。
『…うぅ、ん』
ちょんちょんと頬をつつけば、Aは少し眉を顰めて迷惑そうな声を出したが、すぐに安らかな顔に戻って寝息を立てている。
「かわええなぁ…」
思わず小声で呟いた。つやつやの赤い髪に柔らかい輪郭、長い睫毛。いや、ほんまは黒髪なんやったっけ？どっちでもええわ、中身おんなじやし。
─────『ゾムさん、刀って本当に砥石で研ぐんですね。知ってました？』
『あの、僕も護身術だけじゃなくて攻撃もやってみたいです。大事な人を護ってこそ、なので』
『畑泥棒とは言え、動物を殺すのはやっぱりちょっと可哀想ですけど……彼らの命を戴かないと、僕らは生きていけませんもんね』
『…いいなぁ、カッコいい。僕もゾムさんみたいに綺麗に殺したいです』──────
ここ数ヶ月、ずっと近くで見てきた俺の可愛い部下。妙なとこで冷めとるし自分を殻で守っとる時もあるけど、もっと甘えてくれてもええのに。
「…やっぱ聖女みたいやったなぁ」
不思議な色合いの大きな瞳に漆の髪。おまけに女みたいな声と体。
「…わからんわ、何でやろ」
呟けば、また睡魔がやってくる。俺はAを抱きしめ直し、また眠りについた。
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あくら、 - 久しぶりに夢小説読んだんですがゆうり様の作品最高すぎですね(*´꒳`*) (2022年6月1日 17時) (
レス) @page3 id: d4efbb01c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 楽しく読まさせていただきました。インクではないですが、洗剤で紙に文字を書き、乾燥させてから書いた紙を濡らすと文字が浮かび上がるそうですね。 (2022年4月8日 21時) (レス) id: 1e5fccc68e (このIDを非表示/違反報告)
カナリア - 安らかに眠れwwとびらww (2021年1月10日 11時) (レス) id: e6d62c8537 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 毎回夢ちゃんの葛藤、そして皆からの愛情が伝わって胸きゅんが止まりません...これからも応援してます！ (2020年12月24日 12時) (レス) id: 3009402549 (このIDを非表示/違反報告)
しぇけなべいべ(プロフ) - 少し。ほんの少し。書き方変えましたか......??まぁ。それは置いといて。毎日更新ありがたいです.....!!!!! (2020年12月20日 23時) (レス) id: a746dec877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2020年12月7日 19時
