保育代行四十三話目 ページ48
あの後から、捏島はずっとギクシャクしていて様子がおかしい。ふとした時にちょっと近くなるだけで凄いスピードで飛び退くし、クッキーを食べていても夕食を食べていても上の空。そんなにクッキーあーん事件が嫌だったのだろうか。
『じゃあ、今日はこれで』
「お、おう。ありがとうな」
『明日、私らが学校行ってる間は本当に大丈夫なんだよね？』
「ん。知り合いにツテっちゅーか、昼間だけ頼めそうやから預けに行く」
『解った』
「…………」
『…………』
か、会話が続かない……と言うより、明らかに捏島と視線が合わないし物理的に一定距離を保たれている。元はと言えば私が悪いのだが、ここまであからさまに避けられると流石に堪えるのだけれど。気まずいのかなと思い、今日は早めにお暇する事にした。
『なら、朝ご飯だけ作りに来るね』
「頼んだわ」
私達のぎこちない会話を破る様に、子供達三人が口々にさよならを言ってくれる。
「Aちゃん、おやすみ」
「またな！ばいばい！！」
「おやすみなさい」
パタパタと手を振ってくれる姿は、勿論言うまでも無く愛くるしい。もうお風呂に行くからとパジャマとバスタオルを両手いっぱいに持っているのに、それでも尚頑張って手を動かしているのが尋常じゃ無く可愛いのだ。
『うん、またね。……捏島も、また明日』
「……おう」
捏島だけに言わないってのも何か違うし、と思って微笑みながら言うと、捏島はふいと顔を逸らして「…気ぃ付けて帰れよ」と呟いた。本当、つくづく優しい奴だと思う。この不器用な優しさが、モテる要因の一つなのかも知れないけれど。
『じゃね、お休み』
「ん」
扉を閉めて、そそくさと門を出てからふぅと一息つく。気にする様な態度を取られると、逆にこちらも意識せざるを得なくてドギマギしてしまう。捏島のパーソナルスペースの許容範囲がどうにも読み解けなくて、どうすれば良いのかが解らない。
『はぁ…どうしたものかねぇ』
いつまでもこんな風にお互いオドオドしていては子供達にも良くないのだが、やはりどうしても捏島の全力で拒絶する様な反応に少し戸惑ってしまう。
『明日合わせる顔がなぁ』
独り満天の星空に向かってぼやき、改めて自分の行動の軽率さに呆れて溜息をつく。……こんな事で傷付いたみたいな気持ちになるとか、これじゃあまるで私が捏島の事…
『いや、無い無い…』
ミーハーと思われるのだけは御免だしな。私はぐっと口を引き結び、夜道の空気を切って家を目指した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1984人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆんゆん - っはぁぁぁぁぁぁ〜……日々のストレスが浄化される… (2022年8月27日 1時) (
レス) @page19 id: 92722fc768 (このIDを非表示/違反報告)
ハレル - ｴｯ､ﾏｯマ・ジ・デがわいぃぃぃぃ (2021年10月16日 10時) (レス) @page16 id: 58776279bf (このIDを非表示/違反報告)
ゆきだるま(プロフ) - ちょ、え、あ、んぇ？可愛いんですけど、え、可愛いんですけど、ひええ(死) (2021年7月3日 13時) (レス) id: 0688babc69 (このIDを非表示/違反報告)
羽具(プロフ) - 可愛すぎる！！knさん可愛すぎる！！かわいいのいっぱい死ぬ！！！ (2021年7月3日 12時) (レス) id: a3fd2bf9c9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 最 ＆ 高 (2021年6月28日 23時) (レス) id: 12efeb13d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年5月30日 18時
