▽ 42 ページ43
▽.
「...A..か？」
『...久しぶり。ドラケン』
あれから7年。
中３だった私たちも成人を過ぎた。
エマの葬式に出た次の日、私は周りも驚く程冷静で高校受験も特待生枠をもらって合格した。別に悲しくなかったわけじゃない。苦しくなかったわけじゃない。それでも、強く心に決めたものが私を支えた。
東卍のみんなとはちょくちょく会っていたけれど、関西の大学に進学してからは勉強もバイトもあり、物理的に遠くなってしまった彼等とはほとんど会うことはおろか、連絡を取ることもなくなった。私としては、ドラケンと距離が取れたのはありがたかった。エマの葬式で皮肉にも彼への恋心がはるかに大きかったことを知ってしまったから。
随分と長い時間をかけて、私はこの思いにふたをすることができた。
そして今日、私は久しぶりに地元へ帰ってきた。
8月3日。7年前熱を出して行けなかった夏祭りの日。本当に偶然だったが、実家にきれいにとってあった隆に貰ったあの浴衣を着て、あの日約束していた場所になんとなく寄ってみた。
そしたら...だ、7年越しに彼もその場へ足を運んでいた。
相変わらず高身長で、派手な刺青があるけれど、どこか大人っぽい姿の彼は私を見るなり、なにか信じられないものでも目にしたかのような驚きようだ。
「Aすごく...っ....お前今まで連絡もよこさずに...くそっなんなんだ」
なにか言い直して、思い出したようにつらつらと私に言葉を投げる彼。
驚きやら、怒りやらなんやら彼はきっと混乱しているのだろう。私に伸ばした手を引っ込めて、自身の頭を雑にかいている。
『ごめん。あっちの生活で手いっぱいだったから...今日こっちに帰ってきたんだ用事で。本当は墓参りだけ行こうと思ったんだけど、魔が差してここにも寄った』
ドラケンの視線は抱えている2つの花束に向けられる。
そうだ。圭介とエマに向けたものだ。
「...今から行くのか？」
『まぁ。日は落ちてるけど涼しいし...ドラケンは誰か待ってるんだろ？気にすんなって祭りに行きなよ』
「別に誰も待ってねぇよ...俺も行く」
『えっでも』
「なに俺がついてったら困るのか」
『いいけどさ私だけだし』
「じゃあ問題ねーな。行くぞ」
怒っているのかなんなのか、彼は顔を隠すようにすたこらと歩いて行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 593人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆりあ(プロフ) - はいじさん» コメントありがとうございます！終わり方結構悩んだのでそう言ってもらえると嬉しいです！新作の方もぜひよろしくお願いします！ (2021年8月29日 16時) (
レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
はいじ - 完結おめでとうございます！少し寂しいけどめちゃめちゃいい終わり方でした...!新作も応援してます！ (2021年8月29日 16時) (レス) id: 9db9b51c86 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - マクドさん» コメントありがとうございます！泣いてもらえるなんて...嬉しくて涙が。他キャラの作品もぼちぼち作る予定ですのでよろしくお願いします！ (2021年8月29日 15時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
マクド - めっちゃ泣きました！好きすぎる！他キャラクターとの作品も待ってます(土下座) (2021年8月29日 15時) (レス) id: accf718d90 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 夜野ちいさん» 完結までお付き合いいただきありがとうございます！感動してもらえるなんて..嬉しい限りです！本当にありがとうございます！！ (2021年8月27日 23時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆりあ | 作成日時：2021年7月23日 15時
