□ 枕 ページ8
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「Aさ、昨日、夢見てた?」
「え?なんで?」
「いや……少しうなされてたから」
「んーー、見てた」
そう、夢を見ていた。……翔平の夢を。
今考えれば夢なんて、不自然なことばっかりだ。
急に場所や、出てくる人だって変わる。
それなのに私は私で、同じ場面になった時
そうするかも、という行動をとる。
思うことだって大して変わらない。
「怖い夢?」
「…えっと……ゴリラに追いかけられる夢」
「ゴリラ?笑」
ごめん、翔平。
ゴリラなんて、出てきてない。
ほんとは、…ほんとはね、
翔平が女の人と一緒に手を繋いで、
歩いてる夢だったの。
それを見た私は話しかかけたくても、
話しかけられなくて、ただ怖くて、逃げたの。
だけど、逃げた先にも翔平は現れて。
やっと声かける決心が着いたのに、それなのに、
私の声は掠れて出せなかったの。
ただ遠ざかる翔平の背中を呆然と立ち尽くして
見ているしか出来なかった。
「……怖かったんだよ」
「…怖いよなぁ、そりゃ、」
「すっごくだよ、ほんとに、」
だからうなされてたんだ、って
翔平の手のひらが私の頭に乗せられて
ぽんぽんって2回触れた。
下ろされた手を見ると夢の中の出来事が
急にリアルに思えてしまって。
思わず翔平の右手をガシッと掴んだ。
「…………どこにも行かないでね」
「…行かない、」
「……ならいい、」
両手で掴んだ翔平の右手を離すと
その手は肩に回ってそのまま抱き締められる。
……翔平、わたし、
翔平のこと、好きすぎるかもしれない。
(嘘ついたことぐらいわかるから、)
(せめてAが安心出来ますように、)
(今日はいい夢見れるといいんだけどな、)
(夢ってさ、寝る前の事に影響されるじゃん?)
(へー、そうなんだ、)
(だからずっと俺のこと考えときなよ)
(……なにもう、急にイケメン、)
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作者名:侑里 | 作成日時:2018年4月1日 11時