キミの記憶を失う日まで (ページ18)

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「あの！すいません！」

俺の言葉に彼女は振り向く

「これ、忘れ物です…」とそっとスマホを差し出した

「ありがとうございます！助かりました」

俺の目を見て笑いかける彼女はいつも以上に可愛くみえた

プライベートだから邪魔してはいけないと思っても

バイト先に来るなんて奇跡だと思った

だから勇気を出してみた

「あと、西野Aさんですよね…？」

「はい…」

「あの…ファンなんです…」

「えぇそうなの？嬉しい〜！ありがとね」

「今度の…ライブ行きます…」

「本当？嬉しい！ライブ楽しんでね！」

「はい！ありがとうございます」

「じゃあまたライブで待ってるね〜」

手を振りながら歩いていくAちゃん

どこまでも可愛い彼女が大好きだと思った。

特典会で話すのとは違った感覚で

彼女と話したという事実の余韻に一生浸っていられる。

余韻に浸ったまま店に戻ると

「黒ちゃん〜どこ行ってたの〜」

「ごめん、忘れ物したお客さんとちょっと話が弾んでさ」

「あっ9番の子か！」

どう？連絡先でも交換した？なんて興奮気味に聞いてくるうっちー

「してないよ」

「え〜残念〜」

だって連絡先を交換できるような存在じゃない

本当はもっと手の届かない距離にいること

簡単に近づいていい存在じゃないってことを痛感させられた