世の中にたえて桜のなかりせば (ページ7)

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「じゃあね、東島さん」

『うん、バイバイ〜』

クラスメイトが教室から出ていき、一人だけの空間になった。

高校から入ってきた子たちとも少しずつ仲良くなることができた

学校ってこんなに楽しいんだって思った。

教室に残ったのは日誌を書くため

今日は1日バタバタしてて、放課後に書くしかなかった。

授業内容などスラスラと埋めていく

「あれ、東島さんじゃん」

書いていると、名前を呼ばれ顔を上げると

教室の入り口には黒田くんがいた。

『あっ』

「なんで残ってるの？」

『今日、日直だったから…日誌を』

「放課後に残って書くなんて真面目だね」

『そう…』

いつの間にか、黒田くんは私の目の前の席に座っていて、お互いが向き合う形になる。

『黒田くんは…なんで残ってるの？』

「まぁちょっと呼び出されてさ」

きっとこの反応じゃ女の子だろう…

黒田くんの存在を消すように再び日誌に取り掛かると彼が口を開いた

「見たでしょ？」

『えっ？』

「昨日」

彼の問いかけに手がまた止まる

昨日って黒田くんが女の子と一緒にいたとこ

それも違う女の子と…

『もしかして口止め？彼女さんに言わないでくれ〜的な？』

「はははっ」

私、何か可笑しなこと言ったっけ？

「東島さん、面白いね」

『は？』

「昨日いたのは彼女じゃないよ、まず彼女いないし」

サナが言っていた言葉は本当なんだと思い知らされる。

『……』

「俺、東島さんのこと気に入ったかも」

『へ？』

「まぁそういうことだから、じゃあ」

彼は机の横に掛けていたカバンを持ち教室を出て行った。

『何なのアイツ…』

.

『遅くなってすみません』

「いや、大丈夫大丈夫」

帰り際、担任の元へ日誌を提出しに行った。

「それより体調は大丈夫か？」

『はい、今のところ大丈夫です』

「それは良かった。伊藤たちには伝えたのか？病気のこと」

『伝えてません。今はまだ伝える勇気がないです』

「そうか。あまり無理をするなよ」

『はい、ありがとうございます。失礼しました』

言ったって理解される訳もない

かといって同情されるのはもっと嫌だ。