彼女は僕を好きにならない。 (ページ8)

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水族館遊覧は案の定、久保さんと遠藤さんを前を歩いていた。

だけど、中盤からは久保さんと元木さん。僕と遠藤さんで別れて様々な生き物を見て楽しんだ。

帰り際、久保さんと遠藤さんはまた会う約束をして僕たちは解散し、新宿から私鉄に乗った。

車内はそれなりに混んでいたけれど、座れないほどではなかった。
二人並んでシートに腰をかけ、電車に揺られながら帰路につく。
そのうちに遠藤さんが僕に話しかけてきた。

「内村くん。今日は本当にありがとう」

「だからいいって。どうせ暇なんだから」

「それなら、また機会があればお願いしてもいい？」

何故か即答出来なかった。

「今日みたいなこと、よくあるの？」

「結構ある。たまにね、カップル限定のグッズとかがあってね、喧嘩売ってると思わない？」

「幸せな二人を応援したいだけだよ…」

「わたし、幸せな人は幸せなんだから放っておいてもいいと思うの」

一理ある。けど遠藤さんの場合は僻み気性が来ている気もするけど。

「分かった。出来る限り協力するよ」

「ありがと。助かる！内村くんも困ったことがあれば言って何でもするから」

何でもするなんて無責任な言葉言わない方がいいよって言いたい気持ちをグッと抑えた。

「内村くんは何か好きなものとかないの？」

「ないね」

「音楽とか本とかさ」

「うん、ない」

「え〜本当に？」

逆に遠藤さんのように何かに一途になれるのが羨ましいくらいだと思った。