S.tiger【病系短編集】6

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Side松倉


倉「元太…？」


ステージ裏から楽屋に戻る途中、ボーっとしたまま突っ立ってる元太の姿を見つけた。元太の視線の先では、ちゃかがケホケホ咳きこみながら楽屋の方に向かって歩いてる。



元「ちゃか、どこ行っちゃうんだろ…」

倉「え？」

元「なんか、すげえ遠くに行っちゃいそうなんだよな……。」


前を見たままボソッとつぶやいた元太の言葉に、その時の俺は首をかしげることしかできなかった。










次の日。公演4日目は、昨日みたいに元太がすべり込みでフォローするようなことは起きなかったんだけど……


宮「ゲッホゴホッ！」


裏にはけた瞬間、ちゃかがめちゃくちゃ苦しそうな咳をしながら座り込んでしまった。その顔は真っ赤で、熱もあるんだろうなって見ただけで分かった。


大急ぎで駆け付けたスタッフさんに支えられて、ちゃかが移動する。その後ろ姿を見ながら、俺は隣にいる元太に話しかけた。



倉「ちゃか、やばいよな。声もカスカスだったし。」

元「うん…」

倉「もう音源使った方がいいんじゃね？ＭＣでも喋れてないくらいだし…」

元「それなら、もう俺から言った。」

倉「え、そうなの！？」


ある意味結構言いにくいことをちゃかに直接言えたのは、さすが元太だなと思う。でも、


倉「ちゃかは何て？」

元「口パクは嫌だって。」

倉「え、なんで？」

元「届かないから。」


…何が？


俺が首をひねると、元太はもどかしそうに髪をかき上げた。


元「上手く言えねえけど、多分…」

トントンと元太が自分の胸のあたりを叩く。心、的な意味かな？この言葉じゃなんか足りない気もするけど。




元「…なあ。ちょっと、ケイに協力してほしいことあるんだけど、」

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