この街で

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「…あ、松倉くん。今日からうちの課に新しい人来るからね。」



元太と再会した次の日。

上司から怒られるのを覚悟で出勤すると、ほとんど怒られることもなくサラッとこんなことを言われた。



新卒の俺が入社してから大体1か月くらい。こんな中途半端な時期に来る人っているんだ…。








「本日からこちらでお世話になります。シメカケリュウヤです。よろしくお願いします。」


その新しい人……シメカケさん？は、名前とか服装的には男性って感じがするけど、顔立ちは女の子みたいな人だった。



「松倉さん。改めて、シメカケです。よろしくお願いします。」

シメカケさんは、空いていた俺の隣のデスクに座ると頭を下げた。


「松倉海斗です。こちらこそよろしくお願いします。」

挨拶を返しながら、こっそり社員証の名前を確認する。



…へえ。「七五三掛」でシメカケって読むんだ。すげえ、「しちごさん」じゃねえんだ…。




「そうなんですよ。『しちごさん』じゃないんです(笑)。」


…え！？俺、声に出てた？

心の中でつぶやいたはずのことを言い当てられてびっくりしていると、七五三掛さんはクスッと笑った。


「初対面の人は、みんなそう言うんですよ(笑)。…もうめんどくさいんで、『しめ』って呼んでくださいね。」


「あ、はい…。」


はいって言ったけど、初日からあだ名で呼ぶのってアリなのか？


そもそも、この人は俺と同期ってことでいいのかな？タメ口でしゃべっても大丈夫な人？




謎の多い新人に、俺の頭は軽くパンクしていた。

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