1章 薫風 ページ2
街を見下ろせる小高い丘に立つ。
今住んでいるアパートの近くにあるこの場所は、俺にとって唯一の癒しの場所だ。
いつものように大きく伸びをしようとしたけど、今日は窮屈な新品のスーツがそれを邪魔した。
「もう10時か…。」
会社の始業時刻は、とっくに過ぎてる。この春から社会人になったっていうのに、早速ずる休みをしてしまった。
大人のずる休みって、アリなのかな…。
「いや、アリなわけないよな…。」
就職祝いに父親からもらった腕時計が、キラッと光る。なんだか急に後ろめたくなって、俺はそれを手のひらで覆った。
「…お。お客さんだ。」
え、誰？
突然聞こえた人の声に慌てて振り向くと、そこには俺と同じくらいの年格好の男性が立っていた。
「ここ、いいっすよね。俺が小っちゃいころに住んでた所にも、こんな感じの場所あったんですよ。」
その人は、戸惑ってる俺にも構わずにどんどん俺のそばに近づいてくる。
「俺この近くに住んでるんで、よく来るんです。……まあ、最近はちょっと動けなかったんですけど。」
お兄さんも、ここら辺の人ですか？
そう言って、その人が俺の顔を覗き込んできた。
「あ、俺はすぐそこのアパートに…」
「…え！？」
俺が質問に答えかけたところで、その人は大きな声を出して後ずさりをした。え？俺、何か変なこと言った？
「…海斗！？」
「え、なんで俺の名前…」
「俺のこと、覚えてない！？…俺だよ！元太！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 223人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おさと(プロフ) - おもちさん» おもち様、はじめまして！コメント、とても嬉しく励みになります…！ありがとうございます！！これからも少しずつ更新してまいりますので、ぜひお付き合いのほどよろしくお願いいたします！ (2022年1月26日 16時) (
レス) id: c1210c5b99 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして！更新ありがとうございます。密かに読ませていただいてました。2人の関係性とても素敵です。これからも更新楽しみにしています！ (2022年1月25日 21時) (レス) @page32 id: 5462cacf1f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おさと | 作成日時：2021年10月3日 10時
