S.tiger【病系短編集】番外編

・ ページ48

Side松倉


俺の言葉に、しめの涙はますます止まらなくなってしまった。


もう泣き顔を隠そうとしないのは嬉しいけど、まだ少し辛そうだしそろそろ心配かも…。



倉「如恵留呼ぼうかな…。」

ぼそっとつぶやくと、しめがパッと顔をあげた。


龍「のえ、る。朝から、心配してた…。」

倉「え、朝から？」

しめがコクリと頷く。


龍「辛い、ときは、何でも言ってって…」

倉「それ、如恵留が言ってたの？」

またしめが小さく頷く。如恵留も強がりなくせに、なんて言うしめの顔はどこか嬉しそうで、俺はちょっと複雑な気持ちになる。



しめとはプライベートで遊ぶこともあるし、メンバーの中ではそれなりに近い存在だと思ってた。でも俺は、しめの様子が変なのに気付いてたくせにチキって声もかけてやれなかったし、俺なんかまだまだだな…。






龍「…まつく、」

倉「ん？」

龍「ありがとね、来てくれて。俺、多分まつくだから、気持ち話せた。」

倉「しめ…」




やっぱり、しめはちょっと変なやつだ。変にまじめなところあるし、周りに頼りまくってると思ったら肝心なところでは強がるし。


前から時々思ってた。オープンに見えて、実は薄っすら壁を感じることがあるんだよな。本人に自覚があるかはわかんないけど。




でも、もうそんな壁いらないよ。


これからはもっとお互い色んなことをぶつけあえるように、せめてあと少しだけ近くに行けたら。




泣きはらした目のまま小さく笑うしめの横顔を見て、俺はそんなことを思っていた。











「もっと近くに」fin.

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