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「…私、やっぱり地味かな。」
「え？なに、どういうこと？」
「私、松倉くんみたいに流行に乗れてないし、メイクも下手だし…。」
「いや、そんなことないよ。十分、今のままでかわいいよ！」
言ってから、松倉くんは恥ずかしそうに目を伏せた。でも、すぐに切り替えて私の目を見る。
「…どうしたの、急に。」
私は上手く答えられなくて、少しの間うつむいた。脳裏に、あの店員さんの笑顔がちらつく。
「……出かけることになって、来週末。」
「え、それって…」
デート？と言った松倉くんの声は、少し裏返っていた。そんなんじゃないよ、と言っても、松倉くんの目から疑いは消えない。
「だって、急に見た目なんか気にし出すから。そういうことかなって。」
「違うよ、本当に違うの。でも、すごくオシャレな人だから…」
電車で会ったときの服装はよく覚えていないけれど、美意識の高そうな人であることは間違いない。あの人の近くを今の自分が歩くなんて、想像するだけで恥ずかしさで消えてしまいそうだった。
「ていうかA、好きな人いたんだ…。」
「違うよ、好きっていうんじゃなくて。ただ、多分あの人は田舎者の私を憐れんで……」
「憐れんで？」
ますます、松倉くんが怪訝そうな顔をする。それから、心配そうに眉根を寄せた。
「…A、変な人に騙されてないよね？海人にでも、相談しておこうか？」
「え、なんで海人が出てくるの？」
「だってあいつ、いつもAのこと心配してるし。」
「心配してるんじゃなくて、バカにしてるんだよ。だって…」
言いかけてから、やっぱりこの話はやめておこうと思った。わざわざ松倉くんに話すようなことでもない。
それから、海人にはこの話は秘密にしておくように頼んで、私は松倉くんと別の講義室に向かった。
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作者名：おさと | 作成日時：2023年3月18日 13時
