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Side松倉
宮「クラ、あのさ………あ、ごめん。」
脱衣所のドアが開く音がして顔を上げると、頭に乗せたバスタオルの隙間から、ちゃかの申し訳なさそうな顔が見えた。俺が何か言うより先に、ちゃかの顔が引っ込んでドアが閉まる。
倉「ごめん、すぐ行く。」
宮「いや、いいよ。別に急ぎじゃないから。」
ちゃかの返事を聞きながら、俺は急いで服を着た。胸の手術跡を隠すように、襟の開いていないTシャツを頭からかぶる。
ちゃかは、本当にいいやつだ。何も言わなくても、俺が手術跡を隠したがっていることを察して、こうやってさりげなく気を遣ってくれる。
家族だからとか、男同士だからとかじゃなく、それ以前に1人の人間同士。だから、相手が大事にしてることには下手に口を出さない。昔からちゃかはそういう考え方をするやつで、だから俺たちは家族になれたんだと思う。
同い年の俺とちゃかが兄弟になったのは、小学4年の時だった。
小学校で同級生だった俺たちはもともと仲良しだったけれど、同じように1人で子どもを育てる親同士、俺のママとちゃかのパパ(25歳になった今でもそう呼んでしまう)も、仲が良かった。
俺は気づかなかったけれど、ちゃかは2人の仲に気づいていたらしい。籍は入れないままだったけれど、2人は夫婦になって俺とちゃかは兄弟になった。
急に家族が増えてどうなることかと思ったけど、想像以上に関係はうまくいった。ちゃかのパパはいい人だったし、何よりちゃかと一緒にいるのは楽しかった。
最初から、俺たちは兄弟になるって決まってたんじゃないかって、実は今でも本気で思ってる。これが恋愛なら、多分運命の赤い糸、的な。
じゃあ、俺とちゃかの間にある糸は何色だろう、なんて。
そんな、誰かに言ったら笑われてしまいそうなことをぼんやり考えながら、俺は髪も乾かさないまま脱衣所を出た。
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麦茶(プロフ) - 返信までご丁寧にありがとうございます🥲おさと様は同じ書き手として雲の上の存在のような方だったので、おさと様に読んでいただけてるなんて感激です…!(;;)ありがとうございます!おさと様もご自分のペースで執筆頑張ってください! (2023年4月5日 0時) (レス) id: cb7d8de1c6 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 未来さん» 未来様、コメントありがとうございます!そこまで言っていただけるなんて、嬉しいです😭こちらこそ、初期の頃から素敵なリクエストをいただき、本当にありがとうございました!!未来様の作品も、楽しみにしております! (2023年4月2日 17時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - 素敵なお話を毎度毎度ありがとう御座いました!😭 (2023年4月2日 7時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - おさとさん!!いつもいつも楽しいお話をありがとうございました😭私自身何度もリクエストさせて頂き、とても楽しんで読ませて頂いておりました。おさとさんの物語、全て大好きです!連載は終わってしまい凄く寂しいですが、何度も何度も読み返させて頂きます笑笑 (2023年4月2日 7時) (レス) @page50 id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶様、コメントありがとうございます😭とても嬉しいです、!作者の拙い話をお読みくださり、本当にありがとうございました!実は私、麦茶様のお話が大好きです…。お忙しい中とは思いますが、更新楽しみにしています!無理せず、麦茶様のペースで頑張ってください! (2023年4月1日 22時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2023年1月21日 19時