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Side元太
慌てながらだけど、海斗は一生懸命俺の体を支えてソファーまで連れてってくれた。背中をさすりながら、顔を覗き込んでくる。
倉「…練習、してたの?」
元「え…」
海斗が遠慮がちに指さした方を見ると、動画が流れたまんまの俺のスマホがあった。みんなが送ってくれた、新曲の振付動画。俺は慌てて停止ボタンを押した。
元「……ちゃんと覚えたら、みんなのとこ戻ろうと思ってた。でも…」
でも、無理だった。
すぐ疲れるし、頭もうまく働かなくて何も覚えられない。自分がダメすぎて、逆に笑えてくる。
元「…きっついなー。必死になれないって、すげえきつい。」
笑ってるのに、なんでか泣けてくる。海斗は、そんな俺を怒ったような顔で見ていた。
倉「…お前は、言ってることとやってることが違う。」
海斗は怖い顔のまま、俺に向かってそう言った。このセリフ、なんか聞き覚えがある。しばらく考えて、だいぶ昔に大喧嘩したとき、海斗に言われたセリフと同じだってことに気づいた。
倉「これが必死になってないっていうんなら、何なんだよ?」
そう言って、海斗がテーブルの上のメモ帳を手に取る。なんとか早く新曲を覚えたくて、動かしにくい手で書き始めたメモ。もともと感覚で覚えるタイプだし、たいして役にも立たなかったけど。
倉「ずっと、必死にやって来たじゃん。病気になってからも、なる前も、グループに入る前だって。俺全部見てきたけど、全然変わんない。」
元「でも…」
倉「元太はすげえんだよ、頑張ってんだよ。俺も、みんなも、わかってる。」
海斗が、がっしりと俺の肩をつかむ。こんなに力あったっけ?ってくらい、強く。
倉「元太が自分で認められなくても、俺が認める。ずっと一瞬にいた、俺が証明する。」
かっこいい顔でかっこいいことを言ってんのに、目からはボロボロ涙が落ちてくる。そのうち、海斗は我慢の限界みたいに顔をくしゃくしゃにした。
倉「…ていうか、連絡くらいはしろよ。心配すんだからっ…!」
元「ごめんって…。」
海斗に泣かれると、自動的に俺もまた泣けてくる。
でも、こんなに全力で俺を認めてくれる人がいるから。大げさなくらい、心配してくれる人がいるから。
だから多分、俺はもうすぐ涙を止めてまた笑えるようになると思う。
「証」fin.
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麦茶(プロフ) - 返信までご丁寧にありがとうございます🥲おさと様は同じ書き手として雲の上の存在のような方だったので、おさと様に読んでいただけてるなんて感激です…!(;;)ありがとうございます!おさと様もご自分のペースで執筆頑張ってください! (2023年4月5日 0時) (レス) id: cb7d8de1c6 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 未来さん» 未来様、コメントありがとうございます!そこまで言っていただけるなんて、嬉しいです😭こちらこそ、初期の頃から素敵なリクエストをいただき、本当にありがとうございました!!未来様の作品も、楽しみにしております! (2023年4月2日 17時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - 素敵なお話を毎度毎度ありがとう御座いました!😭 (2023年4月2日 7時) (レス) id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - おさとさん!!いつもいつも楽しいお話をありがとうございました😭私自身何度もリクエストさせて頂き、とても楽しんで読ませて頂いておりました。おさとさんの物語、全て大好きです!連載は終わってしまい凄く寂しいですが、何度も何度も読み返させて頂きます笑笑 (2023年4月2日 7時) (レス) @page50 id: 08c89fe430 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶様、コメントありがとうございます😭とても嬉しいです、!作者の拙い話をお読みくださり、本当にありがとうございました!実は私、麦茶様のお話が大好きです…。お忙しい中とは思いますが、更新楽しみにしています!無理せず、麦茶様のペースで頑張ってください! (2023年4月1日 22時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2023年1月21日 19時