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Side松倉
如恵留は一瞬目を見開いて固まっていたけれど、すぐに納得したように大きく頷いた。
如「そうだね。ごめん、たしかに俺はわかんない。でもね、」
そこで言葉を切ると、如恵留は俺の目をしっかりと見た。
如「その言葉、言った方はもうとっくに忘れてるよ。何の考えもなしに吐いただけの、スカスカの言葉だから。松倉がいつまでもそんなの覚えてて、苦しむ必要はないんだよ。」
倉「……でも、あいつら、俺のこと覚えてた。」
如「それは、自分たちの方が強いっていう間違った過去の記憶にいつまでもすがってるだけ。……俺の周りにも、昔はそういう人がいた。」
ポツリと付け足した如恵留の言葉に、今度は俺が目を見開く番だった。
倉「…っごめん、!俺、如恵留にはわかんないとか言って、」
如「いいよ、だって正しいもん。似たような経験でも、人によって違うから。完全に“わかる”なんて、ないよ。」
そう言うと、如恵留は肩をすくめて小さく笑った。
如「そいつらは、中学の時からずっと同じ場所に立ってるんだね。どこにも行けない、可哀そうな人たち。…でも、松倉はどう?」
如恵留に支えられながら、俺はゆっくりと体を起こした。正面の鏡に自分の顔が映る。泣いたはずなのに、舞台用のパリッとしたメイクはほとんど崩れていなかった。
如「松倉、無理しなくていいよ。ゆっくりでいい。でも、松倉は、俺たちは、頭ごなしにけなしてくるようなやつが想像もしなかったような場所に今いるんだよ。だから、俺個人としてはね。1人の仲間としては、残念な奴らの言葉なんかに負けないでほしい。」
如恵留の言葉を頭の中でゆっくり繰り返して、俺は静かにうなずいた。それを見て、如恵留が穏やかに笑う。
如「松倉の味方って、想像以上にたくさんいるんだから。みんな松倉を守る気満々。だから、ちゃんと頼りなよ?」
ね、と呼びかけるように言いながら、如恵留が楽屋のドアの方に顔を向ける。不自然に小さく開いたドアから、ドタバタと慌てたような足音が聞こえた。
如「今さら逃げてもバレてるって。……ねぇ?」
倉「うん…(笑)。」
だって心配だったしー、と元太の声が聞こえる。俺はその声を聞きながら、久しぶりに心から笑った。
「変わりゆく君」fin.
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雅 - ↓もしよろしければ書いていただけると嬉しいです。ご検討のほど宜しくお願い致します。 (2022年10月30日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 赤が酷いトゥレットに苦しむお話。白目を剥いたり、身体が勝手に暴れたり、大きな声が出たり、意味のわからない声を出し続けたり、首振りが止まらず吐いたり。症状でストレスが溜まり、ストレスで症状が悪化する負のループ。友達も出来ず双子の黄だけが唯一の味方。 (2022年10月30日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
こまち - そして貯めたお金で誕生日プレゼントを買おうとしていた。しかし何も知らない桃はその日も緑を叱る。そして翌日。プレゼントを買った緑はバイトを終え急いで帰ろうとし交通事故に遭う。病院に駆けつけた桃は冷たくなった緑と対面。全ての事実を知った桃は泣き崩れた。 (2022年10月26日 18時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
こまち - 桃×緑(兄弟)のお話をお願いします。早くに親を亡くし2人で暮らす。弟の緑は最近夜遅くまで帰ってこず桃との関係はピリピリ。でも実は家計が苦しくても自分を養ってくれる桃のため学生の緑は複数のバイトを掛け持ち夜遅くまで働いていた。→ (2022年10月26日 18時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - こんばんは!リクエスト失礼します🙇🏻♀️「やさしいひと」がすごく好きなので、同じ設定でまたお話書いていただきたいです!よろしくお願いします、おさと様のペースでこれからも更新頑張ってください、楽しみにしてます! (2022年10月26日 0時) (レス) id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年10月16日 19時