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迷いは、確かにあった。
大きな音、光。そういう刺激は発作を誘発しかねない。決して状態がいいとは言えない海斗には、避けておくべきことだ。
でも、だからこそ、連れていきたいと思ってしまった。海斗を、生まれて初めての夏祭りに。
痩せた顔に浮かんだ、2つの目の輝き。明日どうなるかわからない毎日だからこそ、久しぶりに見せてくれたその輝きに俺は抗うことができなかった。
閑「うわ、すげえ人出だな…。」
思い切って海斗を連れてきた夏祭りの会場は、想像以上に混み合っていた。あふれかえる音と少し薄い空気に、心配が募る。
閑「海斗、大丈夫?」
宮「……んっ」
答えたそばから、海斗の顔が重力に負けていく。細い手足がピンと突っ張りだしたのを見て、俺はすぐに海斗の車いすを人の少ない端の方に移動させた。
閑「海斗、大丈夫だからな…。」
すぐに痙攣が始まった海斗に、気休めにもならないと分かったうえで声をかける。幸い発作はすぐに治まってきたけれど、顔色は悪いままだった。
宮「っケホケホ、」
閑「…おぉ、ちょっと待ってな。」
唾が気管に入ったのか、海斗がむせる。もしかしたら痰も詰まっているかもしれないし、念のため吸引した方がよさそうだ。
閑「……ん、よし。よく頑張ったな。」
外出のときも吸引できるように準備しておいてよかったと、心から思う。やっぱり息苦しかったのか、吸引を終えてしばらく休むと海斗の顔に少しずつ色が戻ってきた。
閑「なあ、海斗。人いっぱいだし、少し疲れちゃったな。……お家、戻らない?」
海斗と同じ目線にしゃがんで声をかけると、海斗の肩がビクッと震える。落ちかけていたまぶたが持ち上がって、眉が一気に吊り上がった。
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雅 - ↓もしよろしければ書いていただけると嬉しいです。ご検討のほど宜しくお願い致します。 (2022年10月30日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 赤が酷いトゥレットに苦しむお話。白目を剥いたり、身体が勝手に暴れたり、大きな声が出たり、意味のわからない声を出し続けたり、首振りが止まらず吐いたり。症状でストレスが溜まり、ストレスで症状が悪化する負のループ。友達も出来ず双子の黄だけが唯一の味方。 (2022年10月30日 21時) (レス) id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
こまち - そして貯めたお金で誕生日プレゼントを買おうとしていた。しかし何も知らない桃はその日も緑を叱る。そして翌日。プレゼントを買った緑はバイトを終え急いで帰ろうとし交通事故に遭う。病院に駆けつけた桃は冷たくなった緑と対面。全ての事実を知った桃は泣き崩れた。 (2022年10月26日 18時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
こまち - 桃×緑(兄弟)のお話をお願いします。早くに親を亡くし2人で暮らす。弟の緑は最近夜遅くまで帰ってこず桃との関係はピリピリ。でも実は家計が苦しくても自分を養ってくれる桃のため学生の緑は複数のバイトを掛け持ち夜遅くまで働いていた。→ (2022年10月26日 18時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - こんばんは!リクエスト失礼します🙇🏻♀️「やさしいひと」がすごく好きなので、同じ設定でまたお話書いていただきたいです!よろしくお願いします、おさと様のペースでこれからも更新頑張ってください、楽しみにしてます! (2022年10月26日 0時) (レス) id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年10月16日 19時