一歩も譲らない【br,sh】 ページ1
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ピロン、と音がしてスマホを見ると私がついさっき送った[ごめん、遅れる]に対する返事が来ていた。
せっかくの祭りだからと気合を入れていた筈なのに集合時間に遅れるという大失態。
[近くついたよ]と肩で息を整えながら送信して辺りを見渡した。周囲は浴衣を来た人で溢れかえっており
、掻き分けて進む事で精一杯だった。すると、見覚えのある高身長がこっちに手を振っているのが視界に入った。
『ほんっとにごめん！！』
「いいよ僕達も今来たところだし」
「ほら、早く行かないと食べ物なくなるぞ」
こんなに人が多いとは思っておらず慣れない浴衣で来るんじゃなかった、と少し後悔。歩きにくい上にすれ違う人に足を踏まれてかなり痛い。前を歩くシャークんが手を握ってくれているものの、気を抜くと人混みに流されてしまいそうだ。
「Aシャークん、ちょっとだけ休憩しない？人酔いしそう」
「それもそうだな、あっちに休む所あったし行ってみるか」
「Aは大丈夫？」
心配そうな表情で顔を覗き込んできたぶるーくとの距離が近い。こんなに距離近かったっけ…？
いやいつも通りのはずだ、と心に言い聞かせてベンチに腰を下ろした。
「俺何か飲み物買ってくるわ」
『あ、シャークんありがとう』
そう言って再び人に飲まれていったシャークんの後ろ姿が、普段とは違う浴衣のせいか少し大人びて見えた。
「A、足痛いんでしょ」
『…えっ』
「バレバレだよ、ほら見せて」
緒のキツい下駄から開放された足の指の間が赤くなって皮がめくれかけていた。無理して背伸びするんじゃなかった。「ほらも〜赤くなってるじゃん」と言いながらも何処に持ち合わせていたのか、絆創膏を取り出し器用に貼ってくれた。時々触れる指が擽ったい。
「何かあったらすぐ言わなきゃダメだよ」
『うん、ありがとう』
「そんなに辺り見回して、シャークんがやっぱり気になる？」
『…え！？いやそういう訳じゃ…！ただ場所わかるかなーって…』
とてもご機嫌とは言えないような顔で不貞腐れる彼が可愛らしくて、つい笑ってしまった。
「Aはシャークんが好きなの？」
今までされたこともないような問に驚いて彼の方に目をやると、そっぽを向いていて表情が見えない。日はもう既に落ちて辺りは暗くなり始めていた。屋台の光が私達を照らす。
「僕はさ、A＿」
「何の話してんの？」
私とぶるーくの間にペットボトル飲料が割って入ってきた。
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作者名：U酸 | 作成日時：2018年10月16日 4時
