ジャッジメント (ページ1)

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今や生活の必須アイテムになっているSNS。
俺らアイドルには無縁のコンテンツだが
スタッフや友人と食事をすると時々話題に出てくる。

「増田さん、この前銀座でお買い物されてたみたいですね」

雑誌でいつもお世話になっているスタイリストから
そう訊ねられた。

「この前？俺、銀座には1ヶ月ぐらい言ってないよ？」

「えっそうなんですか…！SNS内で目撃情報があったのでつい....これは失礼しました...。」

「あっいえ...！」

こういうことは慣れっこだ。
普段生では見かけない芸能人を見れば
普通は身近にあるSNSで発信したくなるものだ。

特にアイドルはプライベートは無いものに等しい。
あるとしたら家の中ぐらいだ。

1歩でも外に出れば
アイドル：増田貴久として振る舞うように
かれこれ何十年も心に決めている。

それでもどこか少し、恐怖を感じてしまう。

俺の目の見えないところで
どうすることもできないところで

＂俺＂を操作されているような気分になる。

「...ださん......すださ......増田さん！」

「はい！？」

「あっごめんなさい...！珍しくボーしていたのでつい大声を....」

「あっいえ！ボーしてた俺が悪いので。
今日も素敵な髪型ありがとうございます」

スタイリストは嬉しそうに笑った。
それを見て俺はホッと安心した。

鏡に映っている俺の瞳を見つめながら軽く頷き
撮影スタジオへ向かった。

心配するほどじゃない。

増田貴久は、俺の中にしかいないのだから。