【刀剣乱舞】天仰ぐ百合の彩伍 (ページ10)

今日:15 hit、昨日:7 hit、合計:9,536 hit

百三十話ページ10

―――真田信伊。
真田信繫の叔父であり、真田の名と家を守る為、本家とは別行動をとり徳川に組する武将。もともと関ヶ原の戦いより以前に徳川に仕える身であった彼は、家康の命により豊臣に付いている信繁を徳川へ移るよう説得をする。

その会合が行われたのは十二月十一日。真田丸の戦いの後に行われるものだ。

　

「もし信伊さんが今の時点で遡行軍に干渉されていたら、真田丸の戦いで寝返る可能性も…」

「それに真田丸の戦いが正史通りに進んだとして、その後の会合の場で遡行軍が現れりゃあ…」

「……、徳川の方にも遡行軍が現れているのは鳴狐さん達からの報告にあったし、私も微弱ではあるけれど観測はしてた。つまり今、豊臣と徳川がお互いに、相手に“鬼”の力が加わったのかって疑心暗鬼になってる。その状況で遡行軍がその場に現れれば、信繁か信伊、どちらを狙ってきたとしても、鬼を使ってきたって互いが思い込んじゃう…」

「この会合において信繁は信伊の誘いを断る形で終わっていて、歴史通りであればそのまま冬の陣は進んでいくんだが…」

「ここで小競り合いが起きれば、身内であろうと容赦無しと互いが思い込み、双方にとっては充分な火種になります。もしかすると、夏の陣が行われる前に新たな戦が発生する可能性も…」

　

今までの遡行軍の動きは、度々起こる戦に便乗し徳川の将の寝首を掻こうとするものや、互いの陣営に潜り込み暗殺、もしくは洗脳しようとする動きだった。しかしそれよりも先に自分達が動き遡行軍を討伐してきた事で、“鬼”という不確かな存在の噂のみが広まる事になった。

遡行軍は、逆にその状況を利用する事にしたらしい。真田丸の戦い、そしてその後の会合、どちらを狙ってきてもおかしくない。

　

「どうしてチマチマ突付くような事を？って思っていましたけど、これで合点がいきましたね」

「……」

「主。気が急いでしまうのは分かりますが、あくまでこれは憶測、焦りは禁物です。それにまだ時間はあります。大丈夫です」

「……。うん、きっと大丈夫」

　

一期の言葉に、唇を少しきつくした後に笑みを返したA。しかしその笑みは、誰が見ても無理をして繕っているものだと分かった。