百三十一話 ページ11
「……っ。こんのすけ、この事を急いで鳴狐さん達に伝えて来て」
「畏まりました！」
投影を消しすぐさま駆け出したこんのすけの背中を見送り一息つく一同だが、まだ張り詰めた空気が場を支配していた。Aは強く拳を作り、早まる動悸を落ち着かせようと密かに呼吸を整えようとしていた。勿論三人はその僅かな息の乱れに気付いている。
「……それじゃあ、私は一旦本丸に戻るね。信伊の事は気になるだけど、真田丸の方が今のところ歴史に大きな影響を与えるだろうから、まずはそこをお願い」
「えぇ。ご期待に添える働きをしましょう」
「はい！じゃんじゃん任せて下さい！」
「大将こそ、根を詰めすぎるなよ？」
薬研の指摘に困ったように笑い返したAはそのままこの時代を後にした。絶対に根を詰める、いやもう既に詰めていると確信した三人。
鶴丸から話は聞いてはいたが、確かに彼女の様子には何処か違和感があった。疲れも見える事から、本丸に戻ったとしてもあまり休んでいないのだろう。
「………全部片付いたらさっきの平手打ちの仕返しでもしてやるか」
「…一応聞くけどどんな？」
「睡眠薬盛って眠らせて“一日赤ん坊”って張り紙を顔面に貼っ付けて皆の前で徹底的に甘やかす」
「乗った!!」
「こらこら、やる時は程々に。年頃の女性なのだから赤子扱いしたら可哀そうだろう？」
「止めない辺り一兄も乗り気じゃん」
ニヤリと笑う鯰尾に、一期は綺麗な笑顔を返したのだった。
―――――…
徳川の様子を伺う鳴狐達の元にこんのすけからの伝達が届いたのはそれから直ぐだった。その場で隠蔽値が最も高い骨喰がすぐさま真田信伊の元へ偵察に向かうと案の定、微弱ながら時間遡行軍の気配が信伊の周りに複数感じられた。
「…主の読みは当たりか。……それにあれは…」
信伊の気にも、異変が感じられた。周囲の人間の言葉には何の支障も無く受け答え出来ているが、一人になると譫言が目立つようになるのだ。そしてその内容は、信繁の事ばかりである。やれ信繁の様子は、どうにか徳川に、等。はたから見れば身内を案じている様にも見えるが、その時の目は虚ろであり、―――時折、赤く妖しい光が灯る。
「(―――洗脳か…)」
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まゆみ - ふてくされ、他の人に迷惑だから出て (4月11日 22時) (
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作者名：渚 | 作成日時：2023年4月25日 22時
