【刀剣乱舞】天仰ぐ百合の彩伍 (ページ2)

今日:14 hit、昨日:7 hit、合計:9,535 hit

百二十二話ページ2

「全く、お二人とも良いお年なのですから、執務室で年甲斐もなくじゃれ合いなどなさらないで下さい」

「いいじゃないかこんのすけ。調度昼時で仕事も一段落付いていたんだ。こうして息抜きして英気を養う事だって大切なんだぜ？」

「驚きで英気を養えるのってこの本丸では少人数でしょうに。まぁでも仕掛けられたら倍にしてやり返して良いのがうちの方針だから、合法でふざけた報復が出来るのは正直めちゃくちゃ楽しいよね。この本丸で過ごす中で一番心が高揚する。食べ物を無駄にするやり方は絶許だけど」

「鶴丸さんお願いします。A様の奇行を誘発させる行動はお控え下さい。先程だって鶴丸さんの奇声を聞き駆け付けた刀剣の皆様がパニックになったんですから」

「一見したら鶴さんが発作起こしたみたいな絵面だったもんね」

「……いえ、多分そうではなく…」

　

駆け付けた先でAが鶴丸に馬乗りになり、下敷きにされている鶴丸が顔を真っ赤にさせている光景に何振りの心臓が持っていかれた事か…。そんな騒ぎの末に歌仙によって見事なたん瘤を頭に作った二人だが、全く反省の色を見せていない辺り鶴丸は恐らく分かっていると思うがAは無自覚なのだろう。
太陽が照る縁側。平和な空間に気疲れたっぷりのこんのすけの溜息は蝉の声によって搔き消された。

　

「どしたん、こんのすけ？」

「…もう何でもありません。ところでA様、今後の第一部隊の動きについては…」

「大丈夫、ちゃんと考えてるよ。今の所、徳川も豊臣も歴史通りに十一月に兵を招集してる。遡行軍の気配は調度その時期の大阪だから、確実に鴫野の戦いで何かしら仕掛ける筈。一期さんの報告によると――」

「……」

こんのすけと今後の話をするAは完全にそちらに意識を向けており、鶴丸はそれを静かに横目で見やる。

――彼女は気付いているだろうか。戦況の話をする時、己がどんな顔をしているのか。

鶴丸は誰にも悟られない様に溜息を吐く。彼女は悟られない様にしている様だが、第一部隊が出陣してから彼女はずっと気を張り詰めながら生活している。他の刀達もそれに気付いており、特に粟田口の刀達は彼女の感情に敏感になっている影響かここの所ずっと表情が硬い。そこで彼女の気が紛れる様にと優しめの驚きを提供したのだが、どうやら効果は薄かった様だ。

指揮官として常にそちらに気を向ける事は大切ではあるが、笑顔の裏で時折目を伏せ不安を露わにする彼女は見るに堪えなかった。