九十五話 ページ7
徐々に距離を縮めるAに骨喰は戸惑い、思わず腰掛けたまま身構えてしまう。それを察したAは後一歩の所で足を止め、骨喰と同じ目線になる様にその場にしゃがみ込んだ。
「…あの時は本当にごめんなさい。本当ならもっと早くにこうして謝るべきだったと思うけど、合わせる顔が無くて…」
「……Aさん…」
「一期さんが来てくれたら安心してくれるかなって思って引き籠もってたんだけど、それじゃあ私と骨喰さんの蟠り自体は解決しないだろうって、鳴狐さんと一期さんに諭されまして…、今思えば、一期さんに全部任せて逃げようとしていたんだなって…」
目を伏せながら弱々しく語るA。しかし彼女はしゃがんでいた足を正座の形に変え、今度はしっかりと骨喰の目を真っ直ぐに見据えた。
「時間が掛かっちゃったけど、骨喰さんとは仲良くなりたい。これから先、肩を並べて戦っていきたい。だから…仲直りしてくれませんか？」
何の迷いも無い真っ直ぐな言葉。それは圧となって骨喰以外の言葉を寄せ付けない。しかしその中には確かな温もりがあり、骨喰の肩から不思議と力が抜けていく。
――――彼は小さく、コクリと頷いた。
「………っハァー！良かったぁ緊張したぁ！」
「ふふっ、申し上げた通りでしょう？」
「良かったですねぇ、主殿！」
力が抜けたのか、Aは胸を抑えながらその場にへたり込んだ。相当緊張していたらしく、先程までの締まった顔は完全に崩れ笑顔は何処かだらしがない。
それに感化され見守っていた他の兄弟達も息を吐き、皆がAと骨喰を笑顔で囲った。アイスが掛かりベトベトになってしまったAであったが、お構い無しに引っ付くものもいる。良かった、良かったと皆が笑い合う中、それを見ていた鳴狐と一期は安堵しながら穏やかに微笑むのだった。
「…………」
そんな中、一人だけ浮かない表情でAを見つめるものがいる事に、誰も気が付く事はなかった。
――――――…
あの一件以来、粟田口派の刀とAとの間にあった溝は塞がれ、ギスギスしていた空気も薄れ穏やかな日常が戻りつつあった。
一期一振も本丸に馴染み、弟達の面倒を見ながら鍛錬に励み、人の理にも少しずつ慣れてきていた。時折Aの行動力に驚かされる事もあるが徐々にそれにも順応し、最近では弟達に叱る様にAを嗜める場面も見かける様になった。
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渚(プロフ) - 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん» 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん、コメントありがとうございます！絵を描いてる分更新が遅いですが、褒めていただけると本当に嬉しいです。今後も応援宜しくお願い致します！ (2022年12月9日 6時) (
レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜パスタ(閲覧垢)(プロフ) - 話が読みやすく、かつ設定もよく練られていてとても面白いです。絵もお上手ですね。情景がひしひしと伝わってきます。応援しています(*^^*) (2022年12月9日 4時) (レス) @page24 id: c07d8ae3cf (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ライチ@あんみつ神！さん» ライチ@あんみつ神！さん、今作初コメントありがとうございます！久々のコメントでとても糧になります！更新は相変わらず遅くなるかもしれませんが、なんとか完走出来る様に頑張ります！ (2022年8月8日 13時) (レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
ライチ@あんみつ神！ - この作品大好きです！更新頑張ってください！ (2022年8月8日 9時) (レス) @page16 id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：渚 | 作成日時：2022年1月21日 12時
