百十七話 ページ29
「あんたのそれは、俺が知っているものとは全く違った。身を焼く熱、失う痛みなんかじゃない。まるで、兄弟に囲まれている時の温もりの様で…。優しい光だった」
「―――。」
「うまく言えないが…兄弟達がいるなら…、あんたがいるなら、きっと大丈夫だと…、何となくだがそう思える。―――不思議だな」
その時誰もが、骨喰の表情に目を奪われた。
―――微かにだが、彼が口角を上げたのだ。
慣れ親しんだ兄弟達に対しては時折僅かに見せる顔ではあったが、身内以外にこの顔を見せるのは初めてであり、無表情に慣れているAにとってはとんでもない衝撃だった。骨喰の目に惹かれたのは、今までになかった強い意志が宿っていたからだろう。
「………これがギャップ萌え…」
「ぎゃっぷ?」
「お姉ちゃん、弟の成長を見れたみたいで嬉しいよ…」
「…?…俺は刀剣男士であんたは人間だろう。弟ではないが?」
「分ぁってるよマジレスすなぁ…、こちとら君の大いなる一歩を噛み締めとるんじゃあ…。もうホント…、頭わしゃわしゃしたいぃ…」
「うんうん、分かりますよAさん。骨喰成長したね。俺もわっしゃわしゃしたいよホント」
「兄弟は何故そんな生温かい目を?」
「―――はい、もうそこまで」
完全に緩み切った空気の中、パンッと乾いた音。一期が手を叩いたのだ。彼はやれやれといった様子で辺りを一望し、この話はここまでと皆に笑い掛けた。
「主、骨喰もこの様に言っている事ですし、もう何も心配はいりませんね?」
「…そう…ですね。でもだからと言って、任務に関しては気を抜くつもりはありません」
「えぇ、我々もそのつもりです」
緊張感を取り戻しながら、自信を持った笑みを互いに浮かべる。その瞳に迷いは無く、この場に居る誰もが同じ目をしていた。多少の時間が掛かったが、骨喰の決意表明によって先程よりも士気が高まった様に感じる。これで漸く出陣の準備が整った。
「では改めて、これから歴史改変を防ぐ為に時間遡行を行います。時代は千六百十四年。そこで豊臣と徳川の動向を追いながら時間遡行軍の目的を阻止、討伐を任務とします。恐らく長い戦いになると思われます。皆さん気を引き締めて、大阪の陣の歴史を守って下さい」
凛とした迷いの無い言葉に、皆が強く頷いた。
胸に秘めるのは歴史を守る志。そして、必ず此処に皆で帰るという決意のみ。
「―――第一部隊、出陣です!」
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渚(プロフ) - 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん» 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん、コメントありがとうございます!絵を描いてる分更新が遅いですが、褒めていただけると本当に嬉しいです。今後も応援宜しくお願い致します! (2022年12月9日 6時) (レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜パスタ(閲覧垢)(プロフ) - 話が読みやすく、かつ設定もよく練られていてとても面白いです。絵もお上手ですね。情景がひしひしと伝わってきます。応援しています(*^^*) (2022年12月9日 4時) (レス) @page24 id: c07d8ae3cf (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ライチ@あんみつ神!さん» ライチ@あんみつ神!さん、今作初コメントありがとうございます!久々のコメントでとても糧になります!更新は相変わらず遅くなるかもしれませんが、なんとか完走出来る様に頑張ります! (2022年8月8日 13時) (レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
ライチ@あんみつ神! - この作品大好きです!更新頑張ってください! (2022年8月8日 9時) (レス) @page16 id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2022年1月21日 12時