百十一話 ページ23
あまりに真っ直ぐで、透き通る様な優しい声音。一期一振が語るそれは、彼が人の生きる時間とは異なる長い時を過ごしてきたからこそ、月並みな言葉でも信を置く事が出来た。
未だにAの表情は晴れないが、仲間思いで、兄弟思いの彼女だからこその葛藤に、一期一振は共感と喜びを感じていた。こんなにも誰かを大切に出来る彼女に、不満を持つ事などあるだろうか。
未来に不安を持つのは当たり前だ。過去に飛ぶ事が出来る審神者でも現在より先の事は分からない。それでも自分達は歩みを止める訳にはいかない。歴史に名を刻んだ者や、激動の時代を必死に生きてきた者達が、何度も壁にぶつかり、時に乗り越え、時に夢半ばで潰え、それでも歴史を紡いで来た様に。そしてその人の在り方を、自分達は誇りに思っているのだから。
「まぁ、ちょっとした喧嘩で酷く落ち込んでいる何処かの兄弟と全く同じ様に凹んでいる主を、放っておけないというのが一番の理由なのですが」
「ブッ」
最後の一言で一気に重い空気が弾け飛んだ。
「私が此処に来た時には既に主は机に突っ伏して頭を抱えていらっしゃいましたな」
「あの、一期さん？」
「その御姿は私のとある弟にそっくりで、私に気付いた瞬間には見事な土下座までなさって、流石にあれには驚きましたなぁ」
「一期さんそれ以上は…！」
「そこからは謝罪の羅列が続き、漸く落ち着いたと思ったら今度は嫌われただの酷い事をしただの自己嫌悪が止まらずで、最終的には時間遡行してこの件を無かった事にするかなんて何処まで本気なのか分からない発言まで」
「もぉ堪忍してつかーさい!!」
バンッ！とAが両手と額を机に付いた事で漸く一期一振は止まった。彼はそれはもう清々しい笑みで言ってやったという感情を滲み出している。
完全に置いてけぼりの二振りは絵に描いた様に口を開けていた。
「別に話しても良いではないですか。御自身で反省点を見出し顧みる行為は決して恥ではないでしょう？」
「…顧みる事は大切だとは思いますよ。でもそれを傷付けてしまった本人の前で赤裸々に語られるのは…。そもそも自分で蒔いた種なのにこんなんになって…、恥ずかしいやら情けないやらで…」
耳を真っ赤にした彼女は顔を少し机から離すが、まだ誰とも視線を合わせにくいのか俯きがちにもにょもにょしている。その姿が言い訳をする子供の様に見え、鯰尾はその様子に張り詰めていた気が一気に緩んだのかプッと吹き出した。
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渚(プロフ) - 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん» 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん、コメントありがとうございます！絵を描いてる分更新が遅いですが、褒めていただけると本当に嬉しいです。今後も応援宜しくお願い致します！ (2022年12月9日 6時) (
レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜パスタ(閲覧垢)(プロフ) - 話が読みやすく、かつ設定もよく練られていてとても面白いです。絵もお上手ですね。情景がひしひしと伝わってきます。応援しています(*^^*) (2022年12月9日 4時) (レス) @page24 id: c07d8ae3cf (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ライチ@あんみつ神！さん» ライチ@あんみつ神！さん、今作初コメントありがとうございます！久々のコメントでとても糧になります！更新は相変わらず遅くなるかもしれませんが、なんとか完走出来る様に頑張ります！ (2022年8月8日 13時) (レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
ライチ@あんみつ神！ - この作品大好きです！更新頑張ってください！ (2022年8月8日 9時) (レス) @page16 id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：渚 | 作成日時：2022年1月21日 12時
