百三話 ページ15
「Aさんがいつも俺達の事を気に掛けてくれているのは分かります。そのお陰でいつも万全の状態で戦う事が出来るし、人の身の生活を思い切り謳歌する事も出来てる。だけどそれと同じくらい、俺達もAさんの事が大切なんです。だから俺達の事を頼ってほしい。因みに皆、迷惑なんて全然思っていません」
「……」
「本当ならそれが当たり前なんです。だってAさんは主で、俺達は従者なんですから。だけど貴方は俺達と別け隔てなく対等の存在の様に接してくれる。物である俺達の心をいつも見てくれて、とても恵まれているって思います。だから力になりたいと思うのは当然なんです。…まぁ、寂しいってのもありますけど」
此処で気を引き締め切なげな表情を浮かべれば、案の定彼女は眉を下げ鯰尾の目から視線を逸らせずにいる。人の心に付け込む様で悪いが、優しい彼女にはこれが覿面だ。
「だからお願いです。Aさん、俺達にお手伝いさせて下さい。Aさんの為だけじゃない。これは俺達自身の為でもあるんです」
「……」
これで止めと言わんばかりに優しい声音と共に微笑みを向ける。しかしAはまだ首を縦に動かそうとしない。視線を地に下げキョロキョロと動かすばかりで、困惑が色濃く出ており唇を噛んでしまっている。
まだ足りないのだろうか。先程までこの段階では長期戦にはならないだろうと考えていたがそんな事は無く、思っていたよりも固い壁をどの言葉で崩すか再び思考を巡らせる。が、ふと彼女の顔を見てそれは停止した。
その顔は、何かに怯えている様に見えたのだ。
「…Aさんは、何を怖がっているんですか？」
頭の中で練っていた言葉は全て消え、代わりに純粋な疑問が口から溢れる。Aは彷徨わせていた視線を再び鯰尾へ向けた。その目は酷く戸惑っている。
「…鯰尾君？」
「さっきからずっと視線が泳いでいる。それは動揺や迷い、更に顔が下に向いていたのは気弱になっている証拠です。後、唇を噛んでいるのも感情を無理に押し殺そうとする仕草です。顔色だって悪い。……Aさん、今自分がどんな顔してるか分かりますか？」
問えば彼女は自身の頬に手を当て確認しようとするが、それで分かる筈もない。どうやら彼女は、自分がどれだけ顔を歪めていたのか自覚していなかったらしい。
これでハッキリした。前田が危惧していた彼女の心の陰りの存在を。それを知ってしまえば、もう引き下がる事など出来ない。
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渚(プロフ) - 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん» 蜂蜜パスタ(閲覧垢)さん、コメントありがとうございます！絵を描いてる分更新が遅いですが、褒めていただけると本当に嬉しいです。今後も応援宜しくお願い致します！ (2022年12月9日 6時) (
レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜パスタ(閲覧垢)(プロフ) - 話が読みやすく、かつ設定もよく練られていてとても面白いです。絵もお上手ですね。情景がひしひしと伝わってきます。応援しています(*^^*) (2022年12月9日 4時) (レス) @page24 id: c07d8ae3cf (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ライチ@あんみつ神！さん» ライチ@あんみつ神！さん、今作初コメントありがとうございます！久々のコメントでとても糧になります！更新は相変わらず遅くなるかもしれませんが、なんとか完走出来る様に頑張ります！ (2022年8月8日 13時) (レス) id: 317a1afa0e (このIDを非表示/違反報告)
ライチ@あんみつ神！ - この作品大好きです！更新頑張ってください！ (2022年8月8日 9時) (レス) @page16 id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：渚 | 作成日時：2022年1月21日 12時
