政略結婚【太宰治】 (ページ8)

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部屋の中は… ページ8

其の後、二人は車に乗って同居する家に向かっていた。ポートマフィア所有の高層マンションで、太宰は幹部の為か最上階だ。オーランの本部よりもセキュリティは固く、Aはビクッとしてしまう。エレベーターに乗り、Aは窓ガラスに映るヨコハマの夜景を興味深そうに見ていた。Aにとっては初めて見た夜景だったから…

「さぁ、入って」
いつの間にか、太宰の部屋の前まで辿り着く。中に入る。其れを見たAは唖然とした。
広い部屋なのに必要最低限のものしか置いていない。散らばった酒の瓶や空になった蟹缶。更に、別室には銃などの武器の山がずらっと揃えられていた。一言で表すと…危ない。お世辞にも綺麗とは云えない部屋の中に、沢山の武器。Aは震え上がりそうになる。森が云った『生活リズムが乱れている』の意味がはっきりと判る瞬間だった。
「散らかっててごめんね」
寧ろこんなに散らかっててヘラヘラ笑って云う太宰の方がよっぽど恐ろしい。
「えっと…取り敢えず片付けません？」
元から片付けが好きだったAは太宰にそう云う。太宰は少し驚いたように、
「おや、君がやってくれるのかい？」
と云った。流石に、一人では片付け出来ないほど散らかっていたので
「太宰さんも手伝ってください！」
とAは叫んでしまった。ハッと目を見開く。ポートマフィア幹部に向かって叫んでしまった。やってしまった。殺されるかもしれない。意に反して身体が震える。目を瞑った。

暫く経つ。痛みは来ない。何故か心地よいようなそんな感じがした。優しいようなそんな感じが…Aは目を開ける。視界は真っ暗だった。そう、太宰に抱きしめられていた。意味が判らない。
「ごめんね。吃驚させちゃったね…私が怖いかい？」
太宰が子供のような声を出す。泣きそうな感じの…
「…太宰さんは嫌じゃないんですか？好きでもない、こんな私と結婚して…」
Aは太宰に聞いた。まだ少し身体が震えていた。
「…内緒」
太宰はAの唇にそっと人差し指を当て、優しく微笑んで云う。太宰は散らかってる部屋を片付け始めた。
「なんなんだろう…？」
Aは少し顔を赤らめて呟き、太宰と共に片付けをした。

時間はかかったが、かなり部屋が綺麗になった。