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「あって書いてよ、ここに」
そらるさんは椅子ごと私に近づいてきて、トントンっと私のノートの隅を叩いた
私はそらるさんを一瞥してから、『あ』とだけ書くとそらるさんはほらっと言った
なんのほらなのかさっぱり分からないけど
「シャーペン貸してみ?」
「はい」
そらるさんが持つにはあまりに似使わない白のシャーペンが、そらるさんの手によって『あ』という文字を引いた
並ぶ文字はそらるさんが豪語するだけあって似ていて、本人の私ですらどっちが自分の字か迷ってしまいそうなほどだった
「ほら、似てるじゃん」
「一文字だからですよ。文になったらバレるんですって」
「じゃ、文書いてみ?」
そう言ってシャーペンが私の方に向けられ、私も反射的にそれを受け取る
でもなかなかペンを進められない。
なんて書けばいいのか思いつかないからだ
あれだ、あれ。
帰国子女の子になんか英語喋って言うやつの感じだ。
仕方ないから自分の名前を書くと、隣から呆れの息が漏れた
「迷った挙句にそれかよ」
「じゃぁ なんて書くんですか…」
「名前書くなら相合傘の一つや二つ書くだろ」
「……そらるさんは書くんですか?」
「例えば………____」
そらるさんの視線が私から外れて、私の机に広がるものたちを一瞥していく
その姿を私は息を止めてながら眺めて、そしてそらるさんはピタリとある物を見定めた
そしてそれをつまみ上げると、私の顔を伺って楽しそうに口角を上げる
いや楽しそうというか、全力で楽しんでいるのだろう
私の2割ほど使われた消しゴムを両手で掴んで、ケースとゴムの部分を左右に引っ張っていく
私はその光景を唇をかみ締めて眺めて…
「Aなら……こういうところに───」
「だ、だめ、…っ!!」
慌ててそらるさんの手に飛びつくと、何故かそらるさんに足を跳ねられて、私の身体は宙に舞った
「ひぃぃーーー!」
地に足が付かない不安感で適当にばたつかせると、机やら椅子に当たったのか、色んなものが倒れる耳障りな音がして、そしてついに私はそらるさんごと床に倒れた
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スピカ(プロフ) - わぁ、好きな作者さんがこんなに・・・! (2021年5月5日 13時) (レス) id: 990b6b3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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