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入学して何もわからない僕に、A先輩はいろんなことを教えてくれた。
国語の浦田先生(浦セン)はタバコのために数時間おきに屋上にくること。
雨の日はA先輩が見つけた4階の一番端の空き教室で過ごすこと。
雨の日でもないのに屋上にA先輩がいなかった日、クラスまで迎えに行ったのに彼女はいなかった。
『どこいる?』って連絡したら風邪を引いていると返ってきて焦って走って学校を飛び出して電車に乗って、家まで行ったこともあった。
その日は夜まで看病して、子供は早く帰りなさいと言われたっけ。
高校一年の、冬
彼女の誕生日はみんなより早く来てケーキを置いて、プレゼントを屋上のどこかに隠して宝探しをした。
「なんと、僕からプレゼントがあります!」
「えー!まだあるの?」
ケーキを頬張るA先輩はプレゼントがケーキだけだと思っていたらしい。
「この屋上のどこかに隠しました。」
「探したい!」
「制限時間は5分!」
食べていたケーキを置いてすぐに立ち上がる好奇心旺盛なA先輩。
思ったより簡単だったのか3分後に見つけてニコニコしながら開けていい?!と聞いてくる。
「わぁ!!コート!!」
ずっと欲しいって言っていたコートをプレゼントするとキラキラした目で抱きしめていた。
高校2年の冬、僕にとって高校生活始まって二回目のA先輩の誕生日。
フェンスにHAPPY BIRTHDAYの飾りやキラキラした飾りをつけて、前とは違うホールケーキとジュース。
何も言わずに屋上で待機していると一年前からずっと着ているコートを羽織って現れたA先輩。
一歩踏み出した途端足が止まって目に涙が溜まっていく。
「おめでとうー!!」
「ありがとうっ!」
プレゼントに可愛いと言っていたピアスを渡すと溜めた涙を流し、喜んでくれた。
そんな彼女がとても可愛くて、これからも一緒にいたいと思った。
2年、それは濃く短い期間だった。
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スピカ(プロフ) - わぁ、好きな作者さんがこんなに・・・! (2021年5月5日 13時) (レス) id: 990b6b3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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